ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 491
そうか…あまりにも突然の話だったな、あれも。
「ご主人様は、以前はこのようなことには消極的で、我々も生活の中で切り離された、限定的な範囲でしか一緒にいることができませんでした」
「それが、変わったわけだ」
「ご主人様と奥様の間には、私たちも知らないところで、深い溝があった模様でして…」
それゃあそうだよな…略奪愛で結婚したからと言って、涼香さんの心はずっと伊藤さんにあった訳なんだもんな…
まあそこだけを見ると、和彦さんを気の毒には思うけど…伊藤さんから涼香さんを略奪した経緯を知らない僕は、安易にあの2人のことを批判は出来ないけどね…
「匠くん、久しぶりだね」
そこに、作り上げた料理を持ってきた弥生さん。
「あっ、弥生さん。お久しぶりです」
「ふふ、たくさん食べてね」
お腹は空いてるわけじゃないけど、弥生さんの手料理だもんね。
…それにしても、初恋の人はいつ会ってもドキドキするものだね…
弥生さんを前にすると、一瞬にして高校生だった頃の自分に戻ってしまうんだな…
「匠さんは、弥生さんに聞きたいことがあって今日来たんですよぉ」
「あらそうなの?…何かしら?…」
「あ、いや…食事の後に時間取れますかね?」
やっぱり食卓で聞く話しでも無いもんな…
「うーん…この後、ちょっと食材を買いに行くんだけど…」
「なら、僕も手伝いましょうか?」
「そう?なんか悪い気がするなぁ」
「いえ、弥生さんのためなら平気ですよ」
2人で外出、ってことになれば話しやすいことだろうしね。
「弥生さん、私も…」
「香澄ちゃんは身体に負担が…気持ちだけでも嬉しいよ」