ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 296
涼香さんはお袋と意気投合しているから、お袋から聞いた話もあるだろうな…
「立ち話もなんですから、中に入りましょ」
そう言って、涼香さんと伊藤さんの後について離れの家へ。
…かつては恋仲だったこともあって、涼香さんと伊藤さんは仲睦まじかった。
それこそ、和彦さんよりもお似合いなくらいに…
「匠くんに俺のスーツをやることにしたんだ。」
「まあぁお古だなんて…、よかったらプレゼントとして、新調して差し上げますよ。」
「えっそんな訳には…こないだ頂いた下着で充分ですよ…」
「ほら匠くんが困ってるじゃないか、普通は何十万もする服をプレゼントなんてされたら、何か見返りを望まれてはしないかとビビるもんだぜ。」
「ふふ、それならこないだの下着の…見返りを期待してもいいのかしら?〜」
「お、おいおい…匠くんがいる前で、そんなこと言って…」
「ふふ、期待してるからね♪」
「…まったく」
…なんだ、今でもラブラブじゃないか、この2人。
「ところで、匠さんは、どうしてスーツが必要になられたのです?」
「ああ…再就職先が決まりまして…」
「まあ素敵!エンジニアのお仕事ねぇ!」
前の仕事のことを話していたから、涼香さんがそう思うのも無理もない…
「あ、いえ…それが営業職でして…」
「あら…でも匠さんってとても感じがいいから、営業職、向いていると思うはぁ〜」
「俺もそう思うよ…なんだか構えて接っしなくていいっていうか…匠くんといると、ずっと昔からの友達みたいに安心するからな…」
…伊藤さんまでそんなことを。
「まあ、縁があって決まった仕事なので、どんなことでも頑張ってやっていこうと思ってます」
「うん、頑張ってね」
伊藤さんにクローゼットまで案内された。
「ずいぶん前のかもしれないけど、まだ着れるはずだから」
「構いませんよ。昨日着てたのも親父のなんで」