ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 254
「は、はあ…」
最近ってそんなもんなんですか…?
僕なんてトランクスしか穿いてないようなもんですよ…昨日今日は違いますけどね。
「そこで男である柏原くんが加わることで、商品開発に良い効果をもたらすことができると思って」
まあその為に、唯一の男である自分が、それらを試着しなければいけないということは、納得もできた。
いくら大会社だからといって、いちいちその為にそれらを穿くモデルを雇う訳にもいかないのも、何となく分かる。
だけど…
今日の発表会とやらで、何で僕が見ず知らずの人たちの前で、パンツ一丁にならなくちゃいけないのか?
それにはやはり抵抗があった…
いろいろ思いながらゆかりさんの後ろ姿を追う。
小柄で華奢な身体…本当に子供がいるのか疑わしいくらいの見た目である。
「うーん…」
つい唸り声を出してしまう。
「ど、どうしたの?」
「あ、いえ、なんでも…」
「…ご、ごめんね?どうしても嫌なら断っても構わないし、別室で写真撮るだけでも大丈夫だけど…」
よほど僕が険しい顔をしていたのか、ゆかりさんが涙目になりかけで言う。
「今更なに言ってんですか?!僕はもうとっくに覚悟は出来ていますよぉ!」
あちゃぁ〜言ちゃったよ;…
僕って女の涙に弱かったんですね…
「それを聞いて安心したはぁ♪やっぱり実物と写真じゃ、大きな違いがあるぅものねぇ。」
あれ?ゆかりさん…今まで浮かんでいた涙はぁ何所に?
…やっぱり女の人ってよくわからない生き物です。
しかし、これからこの部署で仕事するのに、こういうことは何度でもあること…のような気がする。
今日はそのための予行練習だと思えばいい。
…そんな頻繁にあったら困るけど。
「ここだよ」
ゆかりさんが立ち止まり、ある部屋を指差した。