ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 223
えっ…と、頭をフル回転させても思い出せない…
だけどこんなに可愛い人を覚えていない訳は無かった…
「あのぉぉ多分人違いじゃありませんか?…同姓同名ってことでは?…」
「やだぁ柏原くぅん〜そういうとこ、全然変わって無いぃ〜」
目の前で愛らしく笑う彼女、しかしそれでも僕は彼女が誰なのか思い出せない。
「…あの、ごめんなさい…やっぱり、思い出せないです」
「ふふふ、そういうところも変わってないなぁ」
ニコニコ笑って彼女は言う。
なんだかもう面接の雰囲気ではない。
「私、岩田遥。思い出した?」
えっ?岩田遥…
「うぇ!?岩田遥って、宏の姉ちゃんのぉ岩田ぁ遥ぁ?」
「クスッ、私のバージンを奪っておきがら忘れているなんて、ホント柏原くんって酷い男よね。」
グゲェ…面目ない…;
確かにもう何十年も前の話し、弥生さんとの別れの辛さに耐え切れず、親友の宏の家で鱈腹飲んだその夜に……
なんてことがあったような…なかったような…;
目の前でクスクス微笑むこの女性…岩田遥さん。
親友の一歳年上のお姉さんで、昔からよく知っていた人だ。
…自分の中の記憶を呼び覚ます。
弥生さんが旅立った後、親友に励まされるように飲みまくって、その後…
…その記憶が正しければ、遥さんは僕の人生で2人めの「お相手」だったことになる。
それにしてもこんな可愛かったっけ?
「いや忘れてったて言うか、遥さんがあんまりにも綺麗になっていたんで、分からなかったんですよ。」
僕は顔を赤らめ、鼻頭をポリッと掻いた。
「クスッ、口は上手くなったんじゃない?
…それにしても柏原くんはあの頃のまんまで驚いちゃった。面接に来た他の青年くんたちと変わらないものぉ」
若く見られることは嬉しいけど、流石に大学出たての輩と一緒にされて、僕は喜んでいいんでしょうか?