ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 213
もし僕が本当に香澄ちゃんと結婚したら、啓くんは義理の弟になるかもしれないんだよな…
こんな弟だったら、大歓迎なんだけどな。
「あ、そういえば…啓くんって何月生まれなんだ?」
「へぇ?残念っすぅ〜もうとっくに過ぎちゃいましたよぉ〜」
「別に、何かやるなんて言ってねーだろ!で、何月なんだよ?」
「4月っすよ!4月2日。学年の最年長なんですよぉ」
…ふへぇ?ってことは香澄ちゃんよか歳上?……
てことは…啓くんは義理の弟じゃなくて、義理の兄さんになるってことぉ?
…特に気にすることではないんだけど、ふと考えると引っかかるね。
まあ、あくまで形だけだから別にいいんだけど…
「まあ、誕生日にいい思い出なんてないですけど」
「そうなのか」
「父は忙しい人ですし、母は…あまり思い出したくないです…梓と付き合ってから、一度皆さんにケーキをいただいたことがありましたね。あれが唯一かもしれません」
そんな啓くんを同情すると共に、自分の育ってきた環境に感謝せずにはいられない…
家なんて4人の子供は勿論、親父にお袋を入れると、年の半分は誕生会の月があったのだ…
「これからはさ、毎年祝ってやるよ…例え梓と別れたって、僕は忘れないからな…」
「お兄さん!めちゃ嬉しいんですけど……何か下心あるんじゃないですか?」
「別にないけど?」
「なんか怪しいっす…」
…とまあ、こんな具合で男2人の会話は続いた。
啓くんは明日も学校だから、あまり遅くまで拘束してはいけない。
「じゃあ…」
「ああ、おやすみ」
啓くんは先にベッドで眠りにつく。
てか、おい…そこは僕のベッドなんですけど…
しかもパンツ一丁だし…
「おい!風邪ひくぞ!」
啓くんは、頭を小突いても起きる気配は無かった…
ったく!…なんて奴だよ;…
僕は仕方無く啓くんの掛ける布団の脇から入り込み、小さくなって寝るしか無かった。