ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 176
「いいよ。ありがとう、少しでも教えてもらえたから」
「はい…」
杏さんの頭をポンポンと撫でてみた。
少し恥ずかしそうな顔をしてはいたが、杏さんも笑顔が戻っていた。
「ところで、話は変わるんだけど」
「はい?」
「杏さんは、僕の妹たちには会ったことあるの?」
「勿論ですは…今でも啓くんのところに訪ねてみえる梓ちゃんとは、毎日のように会っていますもの…」
梓 あいつ…そんな頻繁にここに来ていたのかよ…
「すいません…梓は迷惑掛けているんじゃ?…」
「とんでもない…高校卒業したらここで働くんだっておっしゃて、いろいろと手伝って頂いていますもの…」
おい、あいつそんなこと言ってたのか…
まあ梓は啓くんの彼女だし、青山家の方々にも顔を知っている人はいるかもしれないけどね…
「梓ちゃんが庭師の息子さんとお付き合いなさっているのも伺っております」
「やっぱり、それが一番の理由かなぁ」
流石に香澄ちゃんとは面識は無かったみたいだけど、啓くんの家って昨晩の様子をみると、従業員たちの溜り場になっているみだしな…
そこに香澄ちゃんは呼ばれないって訳か…
まあいくら仲良しだからといっても、所詮香澄ちゃんは雇う側の人間…羽目を外したい時間には声を掛けたくないのも分からなくもないけど…
「なんか、そうするとウチって青山家ととてもつながりが深いんだな…知らないうちに」
「まあ、ご主人の代からですものね」
「…これからだなぁ」
「匠さんがいれば、全てがいい方向に向かう、そう思ってます」
杏さんがそう言ってはにかんだ。