ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 174
「うちの親父…杏さんの現在を知っているのかな」
「それはご存知ないはず…紫が話していたら話は変わりますけど…」
杏さんも、和彦さんと涼香さんに拾われたようなもの…自分の身さえ危うかったのだからなぁ…
「それでも…今の私を見て頂きたいという思いはあるんです…散々迷惑掛けておきながら、今更会わす顔も無いんですけど…」
「そんなこと無いですよ!多分親父はずっと気になっていると思いますよ…こんな素敵な女性の杏さんを見たら、絶対喜びますって!」
「そ、そうですかね…?」
頬を赤くして俯き加減に僕をのぞき見る杏さん。
―やべ、めちゃくちゃ可愛いんですけど
そういえば杏さんも僕より年下なんだよね…見た目の凛々しさからさん付けで呼んでたけど、こういう顔は普通の女の子なんだよね…
もし杏さんがレズビアンだとは知らなかったとしたならば、僕はよからぬ欲情を起こしていたに違いなかった。
そういった男としての立場からしてみたら、実に惜しい存在に思える…
「嘘やお世辞なんかじゃないですよ…“女"を売らない杏さんに、僕は魅せられています…」
「ふふっ、本気ですか?」
「冗談を言ってるように思います?」
杏さんはまだ照れた顔で微笑む。
「…今は誰もいませんし、匠さんのお力にもなりたいので…弥生さんが言っていたこと、知りたいですよね?」
「…それは、まあ…」