ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 122
吹き抜けの高天井から下がるシャンデリアの下で、手を振る二人を前に僕は緊張していた。
壁際には馴染みのメイドちゃんたち以外にも、いかにも貫禄のありそうな女性たちもずらっと並んでいた。
「我が家で働く皆さんに集まってもらいましたのよ…
匠さんのことは主人が来てから紹介しましょうね…」
耳元で小さく言いながら、僕の片尻をキュッと揉んでくる…
…涼香さんも、少し心残りがあったんだな。
「じゃあ、匠さんもお席についてお待ちになってて」
「はい」
涼香さんはそう言って部屋を後にする。
僕は香澄ちゃんの隣に腰を下ろす。
「お待たせ」
そう言うと、香澄ちゃんは少しはにかんだ笑顔を見せてくれた。
「緊張してます?」
「ああ、神経を尖らせて皆に見られいる気がしてね…」
「大丈夫ですよ。お母様は匠さんのこと凄く気にいってましたもの、ここの皆さんも右に習えですよ。」
「それならいいんだけど、お父さんにはどうかな?…それが一番の問題だよな…」
「お父様、さっき迎えに出た時、凄く楽しみにしていましたよ、匠さんに会うの…」
「ああ、僕も楽しみではあるんだけど…やっぱ緊張するよな…」
「ふふ…硬くならないでください、匠さん。お嬢様や奥様も仰るとおり、ご主人様は匠さんと会うのをすごく楽しみになさっていましたから」
香澄ちゃんの隣の杏さんがそう言った。
「うーん、本当にそうなのかと」
「ご主人様は非常におおらかで懐の広いお方です。まして、匠さんのご両親のこともご存知なのですし」
…それが逆に不安なのもあるんですがね…
知っていながらに親父とお袋はそれを黙っていたんだから、何かあるのは間違いないもんな…
会っていきなりに殴られるって可能性だって無くはないかもしれないしな…
ああーこんな思いをするぐらいだったら、詰め寄ってでもちゃんと聞いておくべきだったよぉ―!…