ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1078
「僕って、そんなに悪い空気を漂わせていたんですか?…」
無意識とはいえ皆には申し訳なく思ってしまう‥
「新庄くんも気にしていたはよ…”先輩には申し訳ない”って言ってたは…」
「アイツがそんなことを?…他には何か言ってましたか?…」
「ううんそれだけよ…何を言っているのか聞き出そうとしたけど、それ以上は固く口を噤んじゃって…」
「新庄くんが何も言わないんだから、匠くんにしか聞けないのよ…」
「そうですか…」
「お願い、このことは私たちだけの秘密にするから、本当のこと、教えてほしいの」
美月さんが懇願するように僕を見上げる。
…そうまでされたら、黙ってい続けるわけにはいかないよな。
「アイツ、僕の母親と関係を持ってると思うんだ、たぶん…」
皆の顔が硬直するのが分かった…
それゃあそうだろう…若い女の子ならともかく、お袋はいくら若く見えるといっても40半ばのおばさんだ…
「そ、そうなの?…ご、ごめんなさい…そんなこととは思ってもいなくて…」
「美月さんが謝ることなんか無いですよ…聞いて貰っているのは僕の方なんですから…」
沙織ちゃんが神妙な面持ちで僕を見つめた後、大ジョッキに注がれた生ビールをぐいっと一飲みした。
(どうやらかなりの酒豪の模様…)
「そういうこと…アイツて年上キラーって言われてたんスよね〜、ゆかりさんや夏子さんとも怪しいくらい仲良かったもんなあ」
「あら、その噂は私も聞いていたけど…まさか匠くんのお母様って…何がきっかけだったのかしら…」
きっかけといえばあの日家に連れて来てからだ…
あの声は完全にお袋の方から攻めてはいたんだけど;…
「まあ、うちの母親の方から迫ったんだとは思うんだ…」
「そうなんだ…でも分かる気もするな…新庄くんって母性本能をくすぐられるところがあるもの…」