ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1061
もともと僕には関係ないことなんだ、と言い聞かせる。
新庄はああいう男なんだ、お袋は……いちいち気にしたって、もう僕も子供じゃないわけだし…
…深く考えるのはもうよそう。
そう思った。
彼女のシェーカーから生み出されたカクテルを口にする。
美味しい。アルコールなんだけど、それを感じないような不思議な感覚だ。
「匠くんは、今悩んでることとかあるの?」
美月さんに見透かされたようでドキッとする…
もしかして顔に出てたのかな…?
「そんな大したことでも無いですよ…それより、どうして分かったんです?…」
「ううん…何となく…、今日の匠くん、なんか元気無かったから…」
「まあ…最近いろいろ考えさせられることが多いので」
今日はスズタとの交渉成立っていう嬉しいニュースはあったけどね。
「私たち、全員匠くんの味方だから、困ったことがあったら何でも相談して欲しいな。それがたとえプライベートのことでもね」
「はい…」
ありがたい…
だけどこの先、お袋と新庄のことを美月さんに相談する日は来るんだろか?…
「そう言う美月さんはどうなんです?…せっかく2人っきりになれたんですから、何でも話してくださいよ…」
これ以上突っ込まれたくなかった僕は話題を切り替える…
それに美月さんの男関係に興味があった。
「ふふっ、例えば匠くんは私の何を知りたいわけ?」
「まあいろいろです。美月さんとはあまり話って出来なかったわけですし」
「そうね〜…」
美月さんはカクテルを一口飲んでため息をつく。
「私は今まで仕事優先で生きてきたから、男なんて縁がないのよね。それこそ大学時代に別れた奴以来彼氏はいないし」