ほんの少しの勇気で人生って変わると思う 1037
スヤスヤと寝息を立て眠りにつく葉月ちゃんの隣で、僕はベッドの縁に腰かけようやく一息つく。
しかしお袋…どうやって新庄と連絡を取ったんだろう。
やっぱりあの時…お袋をも動かす魅力がアイツにあったってことなのだろうか。
確かにアイツはイケメンだし、女子からの人気は非常に高い。
夏子さんだって…いや、あれは違うよな、絶対…
これ以上考えたって何もならないのはわかってる。
ただ、僕が見たのは紛れもない事実なんだってことは…
まあ僕も、宏の奥さんであるアンナさんと関係を持ってしまったんだから偉そうなことは言えない…
だけど新庄の相手がお袋となると、やっぱり面白くは無い…
“ごめん今日は帰るな…”
葉月ちゃんの寝顔に声を掛ける。
休憩だったら3時間…2人はそろそろ出て来る頃かもしれないもんな…
葉月ちゃんの部屋を出て、階段を降りて入り口の前まで来たところで、一台のタクシーが目の前を通り過ぎていった。
その車内にいた男女は…お袋と新庄、のような気がした。
「…そこまでの仲になるって、どういうことだよ」
毒づいても意味がないないことだろうけど、今はただ自分の気持ちをどこかにぶつけたかった。
実家に帰るか…?
どういうことかとお袋に問い詰めたい気持ちはある…
だけどここで僕が大騒ぎして、親父に知れることだけは避けたかった…
2人を載せたタクシーが意外にも駅の前で停車する…
中から一人降りて来た新庄…頬を寄せお袋に別れを告げているようだった…
お袋を乗せたタクシーはロータリーを周回してあっという間に走り去っていく。
新庄も足早に駅の改札方向に走っていった。
追おうとした時には遅かった…まだ終電の時間でもないのに。
静かな空間に1人取り残された感覚。
さあ僕はこれからどうする…
「あら〜匠さんじゃないですか〜」
「純ちゃん?なんでこんなところで…」