マンガ家理恵先生とアシの晋一くん 62
にっ、と笑って晋一を覗き込む、その頬はまだ桜色。
そんな何気ない仕草にさえ欲情を煽っている事を理恵は気づいていないのだろう。
「先生……」
目が合うと、晋一が顔を傾け近づいてくる。
じっと見つめたまま。
理恵が瞼を閉じるのを合図に唇が重なる。
「ん、は……ぅんっ……」
絡み合っては離れて、また絡み合って。
繰り返していくうちに理恵の体が準備を始める。
きつく抱きしめる腕にさえ感じてしまいそうになる。
唇をちろちろと舌でなぞられると、もっと欲しい、という感情が走り出す。
理恵は腕を肩に回し体をあずけ、それを伝えようとする。
座ったまま二人の体はぴったりくっついて、距離がなくなる。
「先生……」
舌が深く絡まり合う手前、晋一の体が離れた。
「んぁ……晋一くん?」
キスの感触が残る唇は上手く言葉を紡ぐ事が出来ない。
のぼせた様に赤らめる顔は男の理性を壊すのに十分な威力を持っている。
晋一はぐっとこらえ、続けた。
「お、お願いがあるんですけど」
「ん?なぁに?」
「水着……姿、もう一回見せてください」
.
理恵は一人ベッドの上で半裸になっていた。
正確に言えば、上半身は水着で下半身はショーツを身に着けていた。
晋一は廊下に追い出し、待機させている。
理恵が頷くと嬉々として自ら廊下に立ったのだ。
「先生、どうですか?」
ドア越しに晋一の嬉しそうな声が響く。
「まっ、まだ!ちょっと待ってて!入ってこないでよね!」
はぁ〜い、と緩い返事が返ってきたが今はそれどころではない。
「下着、脱ぐべきなのよね……するのよね……このまま……それってコスプレじゃないっ」
スイッチの入った体にお預けはさせたくないのが正直な気持ちである。
しかし、いままで半裸でいたした事はあってもわざわざ服を着替えてから行為に及んだ事はなかった。
そこが無性に恥ずかしい。
何度も数えきれないほど肌を重ねたが、今回は今までの中で一番恥ずかしい。
「まるで処女の気分だわ……」
でも引き受けてしまった事である。