マンガ家理恵先生とアシの晋一くん 61
晋一はカーテンを閉めると胸元を隠す腕を掴み、軽々と開けてしまう。
羞恥心のあまり顔を反らすが、晋一の視線がどこに注がれているのかは痛いほど分かる。
ゴクリと喉が鳴る音が聞こえた。
「ね?似合わないでしょ?だからやめてワンピースにしようと……」
「コレが良いです」
「……ぇっ?」
「すごく似合ってます、コレにするべきですよ」
「そ、そうかな?」
「そうです、絶対コレが良いです!」
「そこまで言うなら……」
まっすぐな瞳に半ば強引に言いくるめられ、理恵はビキニと同じ柄のミニスカートを手に持ち会計に並んでいた。
「お待たせ、や〜買っちゃったよぉ」
「似合ってましたよ、すごく」
「そう言ってもらえると心強いかな。あ、お茶していこうか?」
「それよりもウチに帰りませんか」
「うん、良いよ」
試着室に入る前と晋一の様子が若干違っている事に違和感を感じた。
少し表情が硬く、なにかに緊張しているように見えた。
結局家路に着くまで晋一は上の空で、口数も少なかった。
「どうしたの?なにか私悪い事したかな?」
冷えた紅茶を入れて差し出しながら理恵は尋ねる。
相変わらず晋一の表情は崩れず、より一層神妙な面持ちになっていた。
「だ、大丈夫?どっか具合でも悪いんじゃ」
慌てて晋一の傍に駆け寄り、背中に手を当てる。
「先生」
「うん?」
綺麗な瞳が理恵を映す。
「あの……」
「う、うん?」
「先生の水着が……あんまりにも……その」
「……似合ってなかった?」
「そんなことないですっ!逆に似合いすぎてて……」
「ムラッときちゃって……」
「……へ?……ム、ラ?」
「あーー言わなきゃ良かった……絶対引かれると思ったんですよ」
途端にうなだれる晋一。
反対に理恵は顔を真っ赤にさせる。
「あ、いやぁ、なんていうか、ありがとう……」
頬を両手で包み込み上目遣い見上げる。
「気持ち悪いとか思わないんですか?」
「っていうか彼氏にむらっとされない方が悲しいと思うけど?」