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マンガ家理恵先生とアシの晋一くん
官能リレー小説 - 年下

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マンガ家理恵先生とアシの晋一くん 57

「もぉ〜、起きて、ベッドで寝るよ」

肩を掴んで強めに揺さぶった。
さらさらした髪が揺れて、晋一の顔にかかる。
力を入れて揺さぶったつもりだが、まだ彼は眠りの中だった。

「ちょっとぉ……なんで起きないの?」

床に腰を下ろし、諦めたように溜息を大きく吐いた。
クッションに顔を埋め、幸せそうに寝息を立てる晋一。
彼の頬にかかる少し伸びた前髪を梳いてサイドに流す。

閉じられた瞳の長いまつげ、女の自分でさえも羨ましくなる肌、笑うと可愛く歪む唇。
その下に広がるのは筋張った硬い、まぎれもなく男の体。

いつかの夕暮れ、この場所で晋一の腕に抱かれながら見つめられていた事を知らず、理恵は見つめ続ける。

そっと額と額をくっつけて目を閉じた。
温かな体温と微かな吐息を、隔てなく感じられた。
晋一と同じくクッションに顔を埋め、彼の指に自身のを絡ませた。




ずっとこの家で一人で机に向かって漫画を描いてきた。
楽しい事も嬉しい事もあったが、つらい事の方が多かったかもしれない。
時々何の為にペンを走らせているのか分からなくなる時もあった。
そんな時は、誰かがこの漫画を待っているかもしれない、と自分を励まし続け今日までやってきた。


彼は私の作品を好いて、その作品を生み出す私を好いてくれる。


その確信は理恵にとってとても大切な事。
原動力であり、自信にもなりうる大切な事。
彼が傍にいると不安はいつの間にか消え、迷いさえも消えた。



漫画が好きで漫画家以外の職業は考えられなかった。
だからこそここまで全力でやって来れた。

自分の作品が晋一という男性を呼び寄せ、その男性と恋愛関係になるなんて。
まさに漫画の世界でしかないと思っていた。
作品が人を結んだのだ。


「ふふ、なんてロマンチックな頭。漫画家だなぁ……私」



理恵はやんわりと漫画を描く理由を理解したような気がした。








.




昼間から公園で遊ぶ子供たちの肌が真っ黒になる頃、理恵の巻頭カラー締め切りも嵐のようにすぎ、晋一も待ちに待った夏休みに突入した。

「いいなぁ、学生は夏休みがあって」

理恵は晋一のベッドに寝転がり恨めしそうに視線を送る。
その横でフローリングに座り雑誌を開いている晋一。


ここは晋一のアパート。
お互いの家を自由に行き来するようになった二人は合鍵も用意し、すっかりカップルとして熟してきていた。

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