マンガ家理恵先生とアシの晋一くん 5
「ねぇ、晋一くん。あなたは仕事にきたのよね。これは雑誌に載って沢山の人に見られる仕事なの」
「はい…」
「体調は線にでやすいの。だから少しでも具合が悪いなら、休むように前のアシさんにも言ってきたのよ」
理恵はアシスタントをしていた時期はあるが、アシを取るのは晋一がほぼ初めてだ。
でも「体調は線に出やすい」と言うのは自分の経験から言っているので、偽りではない。
第一、理恵は体の火照った今の状態の自分が、一番描ける状態では無い事を分かっていた。
真剣な理恵の顔つきに圧倒されたのか、晋一はおとなしくベッドに横たわった。
(そうだよな、皆が漫画を見るんだ。自分のせいで作品の質を落とすわけにいかないよな)
「すみません……じゃあ少し休ませてもらいます」
「いいのよ、ゆっくり休んでね」
首をかしげ、にっこりと笑る理恵に晋一の鼓動はいっそう大きくなった。
(先生は優しいし、美人だよなぁ……彼氏とかいないのかな。いたらベッドで寝るなんて失礼だよな……)
「せ、先生は彼氏とかいるんですか?」
「え……?」
「いやっ、先生美人だし優しいからいるんだろうな、と思って……もしいたらベッドに寝かせてもらうのも失礼なんじゃないかなって……」
美人で優しい、晋一の口から素直に出た言葉に思わず顔がほころぶ理恵。
理恵はベッドの側に座り続ける。
「彼氏、いると思う?」
「はい……先生になら……」
「ふふ…いないわよなんだったら…立候補…する?」