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マンガ家理恵先生とアシの晋一くん
官能リレー小説 - 年下

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マンガ家理恵先生とアシの晋一くん 30



「帰る……の?」
「……おやすみなさい」

一度も振り向く事なく出て行ってしまった。
玄関を閉める音がやけに部屋中に響く。
理恵はその場に座り込む。
頭の中では晋一の放った言葉が渦を巻いてた。


やきもち、確かにそうだ。
嫉妬してやきもちやいてた。


「だって、私……晋一くんが……」


つまらない意地で、見ようとしなかった感情が溢れ出す。
流れ落ちる涙をぬぐう事も忘れ、晋一が出て行ったドアを見つめていた。








青井晋一は朝から憂鬱だった。

家に帰りベッドに入っても理恵の言葉が頭から消える事はなく、悶々としたまま朝をむかえていた。
おまけに本日は朝から夕方まで余す所なく講義が入っていた。
重たい体を引きずり、バスと地下鉄を乗り継ぎ、教室につく頃にはグッタリしていた。
移動中も考える事は理恵の事ばかり。
あの素っ気ない態度と言葉が晋一の胸を締め付ける。

「舞い上がってたのは自分だけだったのか……」

感情を素直に伝えても、理恵の表情は変わらなかった。
それどころか何も言ってくれなかった。

結局自分一人だけが空回っていたと思うとやりきれない感情に押しつぶされそうになる。




その日の講義の内容はさっぱり頭に入ってこなかった。
一日中ぼーっと外を眺める晋一に、周りの女子は「今日儚い感じで素敵」とか「元気ないけどそれもイイ」「私が慰めてあげたい」などそれぞれに感想をもらしていた。
もちろん本人の耳に届いているわけがなかった。


すべての講義が終了し、キャンパスを出る頃には空が茜色に染まっていた。
少し前、腕の中で眠っていた理恵の顔を染めていたのも、こんな茜色だった。
思い出してまた切なくなる。
「来週の土曜日、どんな顔して会えば……」
長いため息を吐いて地下鉄に乗り込む。
今日はこのままふて寝してしまおう、そう決めていた。
一睡もできなかった晋一の体に、電車の揺れは心地よく響いてくる。






見慣れた道を歩き、自宅であるアパートが見えてくる。
築何年かは忘れたが古すぎず新しすぎず、使い込んだ跡が残るこの二階建てアパートに愛着をもっていた。
隣の部屋の住人も同じ大学の学生で、挨拶に行った時は笑顔でむかえてくれて、始めての一人暮らしに不安はあまり持たなかった。

トントンと鉄製の階段を登る。
腰にぶら下げていたキーケースから鍵を取り出す。
手元から目線を上げると玄関の前にうずくまる人影に気づいた。
しゃがみ込み、膝の上で腕を交差し、そこに顔を埋めている。

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