ありのままに生きたくて 5
「それならお給仕とお皿洗いがメインの仕事でいいかしら?」
厨房からサラダを運んでくれる綾香さん。
色とりどりの野菜が見るからに美しい。
「うわぁそういう仕事1度してみたかったんですー、、いいも何も逆に料理が出来なくて申し訳ないです、、、」
これだけのメニューがあるんだ、1人で料理を作るだけでも大変な作業だろう、、
「それは気にしないでいいのよ。私、料理を作るのは苦にはならないんだけど、逆に接客するのがちょっと苦手なのよ…」
うーん、こんなに笑顔が素敵な綾香さんなのに?
人ってやっぱり向き不向きがあるんだろうか。
「藍さんのメイド服姿、テレビで見ててとっても可愛いなって思ってたの。まあウチはそんなお店じゃないけど…」
「ええ、ですよねー。でもありがとうございます。毎回アレが着れるのが凄く楽しみで」
「へぇ…ウチの子たちはあんまり興味を持ってなかったけどね…やっぱり戦闘シーンの方に目が行くみたいで」
「そこは男の子ですねえ」
「毎日泥んこになって帰ってくるのよ。帰ってきたらまたそれはそれは大変なのよ」
お店どころでは無いんだろう…
早く私が一人前になって、お店を任せられるようにならなくちゃだ…
「よかったらお子さんの相手もしますよ。綾香さん1人じゃ大変ですもん」
幸い子供は嫌いじゃない。
「あ、子供を見てるの1人って訳じゃないの…、主人の弟が裏に住んでいてね…」
癌で亡くなったご主人の弟さんかあ…
「旦那の病気がわかってからわざわざこっちに越してきてね、彼がいなかったら大変だったはずよ」
「弟さんはお店は…」
「彼は本業も持ってるから無理はさせられないのよね。まあ今はリモートワークだけど席を外す暇も…」
うーん、そうなのか…
「はーい、藍さん、出来上がりよー」
「うわぁ美味しそうですねー!」
ジューシーに焼きあがったハンバーグの上に、熱々のカレーがたっぷりかかって。こんなの、においと視覚だけで、お腹いっぱいになりそうで。
「ふふ、藍さん、ショウリュウブルーがしちゃいけない顔になってません?」
「ふあっ!?いっ、いまはっ、深浦藍なんですっ」
「うふふふふ」
目の前に出されたご馳走。
「いただきますっ」
まず一口。
「んんんっ!?おっ、美味しいですっ…!」
「ふふ、お口にあったようでうれしいな」