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ありのままに生きたくて
官能リレー小説 - 純愛

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ありのままに生きたくて 1

3歳の時、母が応募した子役オーディションに合格したことが私の芸能人としてのスタートになった。

その後はー普通にお芝居をやってるだけなのに「天才子役」などと持て囃されて仕事が増えた。

中学生になったあたりで学業との両立を考えて芸能活動をセーブしながら普通の女の子としての日常も送っていた。

高校を卒業して、本格的に芸能活動を再開して最初に貰ったのが特撮ヒーロー作品のヒロイン。それが大当たりで、バラエティ番組とかグラビアの仕事もやってきた。

しかしいい事ばかりじゃなかった。ある日からストーカー被害に悩み、それを共演してた俳優さんに相談したら身を寄せていいよと快く受け入れてもらえた。
だけどそれが週刊誌に載って交際報道になってしまった。そんなつもりはまったくないのに。
所属事務所の社長になった母には怒られた。なんで私に言わないのと。言ったところで相手にしてくれないくせに。私が売れっ子になったらモノ同然の扱いしたくせに…

さまざまな悩みが重なって心労で倒れた。そこでもう、女優としての私、深浦藍の人生は終わったんだと悟った。


「あぁー、さっきまでの雨が嘘みたいに綺麗な星空だ」

今私は、山奥の一本道を相棒である愛車とともに走っている。
思えば運転免許も母の猛反対を押し切って取ったものだ。

私、深浦藍は、芸能人であることをやめた。逃げた。
一方的なワガママかもしれない。でも悩み苦しみを抱えながらそれを隠して生きることは、今の私にはもう無理だったのだ。

お世話になった人には「今までありがとうございました」とメールを送って、あとの連絡には一切答えないことにした。母には辞めると短く一言だけ。あとは着信拒否。


「もうちょっと行くと集落があるらしい…泊まれる場所があるか、今夜は車中泊か、まあどっちでもいいけどねっ」

山道の途中に、ぽっかりと開けたような場所があり、公衆電話のボックスがぽつーんと置かれている。不自然に開発されたみたいなロータリーみたいになってる道路と、近くに朽ち果てた標識のようなものがあって、ここが昔はバス停だったことがうかがい知れる。

ダッシュボード上の時計を確認する。
23時。

「今夜はここで。おやすみなさい」

「逃亡」する前に車中泊のマニュアルだの、いろいろ知識を蓄えた甲斐があった。
この時間が苦になることはない。
誰にも縛られることがない、久しぶりに訪れた幸せな時間だと思う。

そんなわけで夜は更けていく。

翌日朝6時。目が覚めるとシトシト雨が降っている。

少し肌寒い。
積んであったパーカーを羽織って、愛車のエンジンを起動させ、今日のドライブを始める。

すれ違う車も1台、あるかないか。
カーナビが示す小さな町を目指して、ちょっと慎重に進んでいく。

午前7時半。
久しぶりに見る街並み。
雨も降っているか降ってないか微妙な感じ。

街に入ってすぐにコンビニを発見。
ちょっとした買い出しをする。ここまでくればあんまり変装は必要ない、と思っていた。

ちょうど通学時間帯。
小学生5,6人の集団が仲良く登校している。微笑ましい。
それをコンビニの駐車場から缶コーヒー片手に眺めていた。


「あっ」
男の子がひとり、私のほうを指さしてくる。なんだなんだ。

「ショウリュウブルーだ!」


―――――え。

「マジ?」
「うん、あの顔絶対テレビで見た人!」
「そ、そう言われればそうかも…!」

彼らは私のほうに向かってダーッと走り寄ってくる。

「本物だ!ショウリュウブルーだ!」
「毎週見てますっ!」

……はは、こんなとこまで来ても、芸能人だったのって、影響あるのね。
でも、不思議と今の空気は、イヤじゃないんだよね。

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