Restart life 5
「桜を見ながら、みんなで食べましょ」
母さんが弁当箱を置いて、ふたを開ける。
いい匂いとともに、弁当にしては豪華なメニューの数々に、僕は驚く。
…そりゃこんなの作るんなら、早起きするわな
母さんの手作り弁当はいつも食べてるけど、今日のはそのいつも以上に美味しかった。
里菜と美咲も『美味しい!』と笑顔で声を上げている。
あのときの夢は確かに不思議だった、でも、今はそれのおかげで、大好きな母親と妹がいて、憧れの人も傍にいて…本当によかった。
「達弥くん?」
「お兄ちゃん、何泣いてるの〜?」
…へ?
い、いや、君らには僕の気持ちわかるはずなど…それもただの言い逃れだな…
「ふふふ、達ちゃんは相変わらずねぇ」
母さんまで僕を見て笑ってるし…
…感傷的になったけど、いい花見だった。
本当によかった。うん、本当によかった。
「楽しかったね」
「うん」
里菜にそう言われ、僕も頷いた。
「今がこうやって楽しくいられるのも、達弥くんと、美咲ちゃんと、お母さんのおかげだよ」
里菜はそう言って、僕にとびきりの笑顔を見せた。
―楽しかった花見から帰り、夜、晩御飯も風呂も済ませたあと…
自分の部屋で漫画を読んでいると
「達弥くん」
里菜の声がドアの向こうからした。
「入っていいよ」
そう言うと、里菜が部屋に入ってくる。
ベッドの僕の隣に座る里菜。
「今日は、ありがと」
髪の毛がまだ濡れていた…風呂上りか。
「うん、まあ、僕も楽しみにしてたからな」
「桜、綺麗だったね」
「う、うん」
その笑顔が可愛すぎて、里菜の顔を直視できなかった。
こんな、誰かと一緒にいる、ってこと自体、僕にとって久々のことであり
しかも今すぐ隣にいるのがあの大人気アイドルだった存在なのだから、胸の高鳴りは半端ない。
「達弥くん」
隣の里菜は、不意に、僕の頬に顔を近づけ、キスをした。