僕の夏詩-七夕の奇跡- 3
私はキラトが眠る病室に立ち尽くしていた。
「……うそ…うそだよね…約束したじゃん!…あたしと結婚してキラトのお嫁さんにするって…七夕祭りの時に………っくうぅぅぅ、キラト、キラト!キラトー!!!!!イヤ、アタシを1人にしないで!目を開けてキラトー!!」
「ツバキ止めなさい!」
「キラト君は残念ですが・・・」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ツバキはその場から動くことができなかった。
親族すら部屋から出された時も、看護士たちが医療器具を片付ける間も、ツバキは部屋の隅でじっとキラトを見ていた。
死装束に着替えさせられる時に、ツバキは始めてキラトの身体を見た。
陽に焼けていないピンク色の肌は、頬擦りしたくなるほどに綺麗だった。
薄茶の陰毛の茂みはすっかりと生え揃い、キラトも大人になっていたことを始めて知った。
そしてそこに垂れ下がるキラトの分身は、主人が亡くなったことを今だ理解していないかのように瑞々しかった。
一度も使われることの無かったそれを見つめ、ツバキは再び嗚咽を漏した。
そしてツバキはふと思い出した。
「妾がその願いを叶えてしんぜよう。だがまだその時ではない時が来たら再び妾のもとへ来るがよい。」
……………!!!!
そうだ!子供の時に七夕祭りの笹の場所で聞こえた女性の声を思い出して一心不乱にツバキは部屋を飛び出して神社へ走っていった。
時刻は深夜。
毎年開催する七夕祭りの神社に大きな笹の場所に着いてみると、
「うそ、すごい!!何これ!」
ツバキの目の前には大きな笹が月の光に照らされてきらきらと輝いている。さらに子供の頃に2人で書いた短冊だけが古びながらにひらひらとあった。