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奇跡の男と牝奴隷たち
官能リレー小説 - その他

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奇跡の男と牝奴隷たち 97

アンドレスの街にあるダンジョン。
水や空気が確保され、アンドレスの街と同じ面積の広さと映像による空も見えるため閉塞感はなく、同じ形の石造りの家が整然とした佇まいで並ぶ。土にふくまれる微生物が酸素を消費するのを防ぐがために、地下にありながら土を露出させていない。そのため、人が移住するための食糧が生産できない。そのことを除けばダンジョン内は気温と湿度まで徹底して管理されており、快適な空間となっている。
アンドレスの真下の地中深くにダンジョンがあるとアベコウキから聞いていなければ、地上の街にいると感じるだろうと、吟遊詩人ディオンは思った。
夕暮れの光の中、大通りを移動してきたスライムをライラはおもしろがって、しゃがんて指先でつついていた。
「これも全部、魔法の仕掛けなのか。すごいな」
地上のアンドレスの街よりも雰囲気が静かなのは、単純にダンジョンに二人しかいないためだけではないと、吟遊詩人ディオンは気がついた。
通りの敷石や石造りの家などに装飾のように彫り込まれている古代象形文字などを眺めながら歩いてみると、古代の神殿のようだと思えてくる。
(たしかに聖地らしい雰囲気がある)
厳然として、空気まで清んでいるように思える独特の雰囲気がある。地上のアンドレスの街には古い街だからなのか、わずかに独特な雰囲気があった。それがこのダンジョンには、もっとはっきりと感じられる。
四隅の広場で、水柱が昇るのを見た吟遊詩人ディオンは、禊の滝のことを思い出していた。だが、滝のように荒々しさはない、静かに水が昇っていくのを
美しいと感動していた。
「めまいしない?」
「まったくしない。ここはすごいところだ」
ライラは地上よりも魔力の強さを感じている。アンドレスの街に来て、吟遊詩人ディオンは魔力の乱れにあてられて動けなくなっていた。
地上のアンドレスの街よりもはっきりと魔力を感じる。地上より魔力の塊に近いだけでなく、魔法の仕掛けの作動のために魔力を引き出しているからであった。地の奥底に魔力の塊があることを、ライラと吟遊詩人ディオンは、アベコウキやマリーナから聞かされていない。
地上のアンドレスの街の魔力の乱れとは真逆の、魔力の中に包まれている感覚がある。
吟遊詩人ディオンはそれを聖地のようにとらえ、ライラは記憶にはないが、なつかしさを感じていた。
ライラは人間ではない。
異界から召喚された者であった。
ライラは召喚される前の記憶を失っている。しかし、ダンジョンの雰囲気は、ライラに召喚される前にはこんな雰囲気の場所にいたのかもしれないと思わせる。
地底の魔力の塊も女神の命から分離したもので、女神の命のかけらをその命にふくむライラに、なつかしさを呼びさましている。
地底の魔力の塊は、七色の光を放つ女神の命を求め呼び続けている。融合して金色の竜となるために。
吟遊詩人ディオンは、大きな浴槽になみなみと溢れている湯にどっぷりとつかりながら、ライラに話しかける。
「旅で野宿暮らしをしていると、湯にこうしてつかることはとても贅沢だと思う。オアシスや川で沐浴したり、濡らした布で体を拭くことは、それなりに気持ちいいものだけどな」
「アンドレスの街は、地上でもお湯が出る」
「温泉という湧水が湯になっているところが大山脈にはある。ただ、毒の煙も出るから注意が必要なんだが、雪のある山の景色を見ながら、温泉の熱めの湯につかるのも気持ちいいものだ」
吟遊詩人ディオンは、アンドレスの街から遠く離れた北の大山脈の温泉の話をライラに聞かせた。
ライラが髪や体を洗い流して、浴槽の中にそっと入ってくる。
毛玉は浴槽の湯にぷかぷかと浮かんでいる。
ふぅ、とライラが湯に肩までつかり息をつく。
吟遊詩人ディオンは、ライラの全裸姿を見ていると少女の姿の美しい女神像のようだと思う。しかし、そばで湯を両手ですくってみたり、ディオンの顔に湯をかけてきて、くすくすと笑っていると、ギャップからとても生々しい感じがする。
「そんなに女の裸がめずらしい?」
「いや、そうじゃないんだが、そんなに俺は君を見てたか?」
「すごく見てる」
吟遊詩人ディオンは目を閉じていると、ライラが隣に来て、もたれかかってくる。

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