PiPi's World 投稿小説

奇跡の男と牝奴隷たち
官能リレー小説 - その他

の最初へ
 92
 94
の最後へ

奇跡の男と牝奴隷たち 94

そのとき、ディオンの右肩のあたりに温かいものが撫でつけられた。
「うわっ、なんだ!」
ライラには毛玉が触手をのばして、驚いているディオンの肩をまた撫でようとしているのが見えている。
いかにも、さっき叩いてごめんなさい、と甘えているように見えるのがライラにはおもしろくて仕方がない。
「私の毛玉、ごめんなさいだって」
「毛玉、ああ、いつも抱いてるやつか。てっきり俺は毛のやたら長いねこだと思ってたんだが」
毛玉から触手が生えて叩いたり撫でたりしてきているのはまったくディオンには想像外である。
ライラはディオンから離れて、一度ベッドからおりると、毛玉を抱いて戻ってきた。ライラが抱いて撫でると触手をひっこめて、丸い毛玉に戻った。
「ふわふわしてるな」
「そう、ふわふわ」
ライラと毛玉とディオンが川の字のように寝そべり、ベッドの真ん中に置かれた毛玉を撫でている。
「これは名前はつけてないのか?」
「つけてない」
ライラが当然のことのように言う。
闇の中で小さな丸い目が赤く光っていて、撫でると少しだけもこもこと動く。これは自分で動けないのかとディオンがライラに聞くと「足がないから、動けない」と当たり前のように言う。
「君が俺をかまって部屋の床に置きっぱなしにされたから、これ、さみしかったのかもしれないぞ」
「そうなの?」
「いつも抱いて連れて歩いてるんだろう。もしかして、眠るときも一緒とか?」
「いつも一緒」
「じゃあ、お前、今夜は俺と寝るか。撫でたり、抱くと気持ちが落ちついてくる。よく眠れそうだ」
ディオンが毛玉に話しかける。
「これは私の大事なもの、あげない」
ライラが毛玉を胸元に抱きよせた。
毛玉はディオンを叩いたら叱られたので、ライラが一番だが、同じライラに飼われている仲間と認識したようである。
毛玉は撫でられながら、ふれているディオンのHPをちびちびと回復させている。
ディオンはそれを「気分が落ちついてくる」と感じたのだが。
「しかたない、君ごと抱いて眠るとするか」
ライラと毛玉の眼が赤く光っているので、位置がわかりやすい。
抱き枕のようにライラをディオンは抱いて目を閉じている。ライラは毛玉を抱いて、体を少し丸めてじっとしている。
そのうち、ディオンがすうすうと寝息を立てはじめたので、ライラはそっとベッドから抜け出して、衣服を着ると、自分の寝室に毛玉と戻っていった。
(ディオン、変なひと)
欲情して勃起したすぐあとなのに、ライラを犯そうとしないで、毛玉と一緒に抱きしめて、ライラより先にぐっすりと眠ってしまった。
今までそんな男は一人もいなかった。
ディオンに毛玉と一緒に抱きしめられていて、ライラは本能の疼きが、もっと気持ちの安らいだ感情で満たされた気がした。
翌朝、ディオンに市場通りの露店に朝食を食べに行かないかと、ライラはさそわれた。
ライラは朝食どころか、数日間、食べ物を口にしないことも多いのだが、ディオンの道案内ということで毛玉を抱いてついていった。
ディオンは「うまい」とやたらとパンの味に感動していたが、ライラはどれも噛んで飲み込んだあとは胃の中では一緒と思っているので、黙って静かに食べていた。
警備隊の女子寮では、レギーナとアルベルが向かい合って休憩所で朝食をとっていた。目が合うと照れくさくて、アルベルは普段より口数が少ない。
吟遊詩人ディオンとライラが宿屋に戻ると、ルミエールからのライラあての密書がレギーナとアルベルによって届けられていた。宿屋の管理をしている初老の商人アーロンが密書を受け取ってくれていてライラに手渡した。
内容は白紙の手紙。これは警備隊屯所にライラから訪ねて来てほしいときの合図である。

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す