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奇跡の男と牝奴隷たち
官能リレー小説 - その他

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奇跡の男と牝奴隷たち 89

剣士が剣を手放すというのは、戦うことを放棄したとも考えられる。
エード族の巫女が、カルーム族の王と謁見したということを伝える歌が残っている。
双子の弟のほうの王子が、王位継承権を兄に譲り、北の王国から去り新天地で巫女を妻として暮らしたという。王位継承権を争う弟を抹殺するために、村を焼き払った兄から、どれだけ離れて暮らしていれば弟の王子と巫女はおだやかに暮らせるのか……。
バレンドルフの妻マノンは、遠い時代の恋人たちの物語として歌の続きが気になっていた。
ライラは別の興味で、歌の続きが気になっていた。
魔法の瞬間移動で赤髪の剣士が愛剣を、石板をライラが破壊したように、破壊してしまったのではないかと想像した。そして古代のエード族には、今のアンドレスの街に残っている魔法陣よりも高度な魔法の技術力があった、とライラは確信した。
吟遊詩人ディオンに、アンドレスの街に残っているエード族の遺産について教えたら、どれだけ興奮するだろうと思うと、ついライラの口元に小さな微笑がこぼれる。
ライラが微笑を浮かべているのは、知らなかった北の古代カルーム族の叙事詩を聴くことができたのでよろこんでいるとディオンは思っていた。
地震の前兆と推測した流れ星が街に落ちたようにディオンには思えた。しかし、隕石が落下した形跡がない。
そして、街の見た目は変わっていないのに、以前の清められたような雰囲気ではなく、油断するとめまいがするほどの、妙に生々しいような気配すらある雰囲気の変化。
これが流れ星の落下に関係があるかわからないが、目の前にいるライラは、路地裏で出会ったとき、見えない街の変化を感じ取っているようにディオンには思えた。
バレンドルフの妻マノンや、このバレンドルフの酒場に来るまでに大通りですれちがった街の住人たちが感じていないものを。
「教えてくれないか、いつからアンドレスの街は変わったのか。あの流れ星が落ちた夜からか?」
「ちがう。落ちた日より少し前から」
ライラと吟遊詩人のディオンは、アベコウキがダンジョンを作成したことを知らない。
(やはり、この少女も街の見えない変化を感じ取ることができるようだ。めずらしい)
吟遊詩人ディオンは、ライラに興味を持った。
ライラは音楽と歌で魔法を発動させる技術があることを知らないが、街に溢れている魔力を感知して路地裏でへたれこんでいだ吟遊詩人ディオンに、気分も良いので、つきあってバレンドルフの酒場に同行している。
ライラがあまり人と会うのを好まず、評議会の会議に出席する以外は、ルミエールとバレンドルフが宿屋に訪ねてきたときぐらいしか面会しない人物なのを、バレンドルフの妻マノンは知っている。
(ライラさん、この吟遊詩人のディオンさんを気に入ったのかしら)
見た目は少女にしか見えない容姿だが、自分よりもライラは歳上かもしれないとマノンは思っている。童顔だったり、見た目が若く見える女性はいるからと、そこに違和感をあまり感じていない。
「あなたは自由の広場に帰るの、それとも、まだ街にいるの?」
「ああ、そういえば君は宿屋の娘さんだとバレンドルフから聞いた。泊まれる部屋はありそうかな?」
「教会に泊まるのかと思った」
ライラは宴会のとき、吟遊詩人ディオンが僧侶メトラと親しげに話していたのをおぼえている。

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