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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 86

吟遊詩人ディオンは、街の大通りを歩いて首をかしげて立ち止まり、あたりを見渡した。
(まるで別の街にいるような……どういうことだ)
街に隕石が落下したのではと危惧したが、広場に来た客からはそれらしい話はひとつも聞けなかったので、逆に気になって訪れてみたが、街の変化にディオンは気づいた。
見た目は何も変わっていない街。
吟遊詩人ディオンは、宴会に呼ばれ街に来たときに街に流れている魔力を感じていた。
(この街なら目をつぶっていても道に迷うことはないな)
とディオンは思った。魔力の流れがあり、それが縦横を区切るようにある大通りに流れている。
(いかん、立ちくらみがしてきた)
バレンドルフの酒場に顔を出そうと吟遊詩人ディオンは歩いていて、立ちくらみがしてふらふらと路地裏に行き座り込んでしまった。
人の手に手相があるように、街にも人が暮らしていて使われている道がある。それが美しい街とまったく無視して煩雑な街がある。ディオンは前に訪れた夜にはこれほど美しい街はないと感心したのだが。
見た目は変わっていないのに、見えない力がうねりながら道とは関係ないところでたまっていたり、かと思えば急に噴き出してみたり、かなり乱れていてそれをたどっているうちに、酔ってしまった。
「ここで何をしているの?」
路地裏で酔いがおさまるまで、意識を見えない力を感じないようにじっとして、意識を集中しないようにぼんやりしている吟遊詩人ディオンに、話しかけてきた人物がいた。
「えっと、たしか、君はライラさんだったかな?」
「そう、私はライラ。大丈夫?」
黒い毛玉を抱いて黒いドレスを着た美少女。宴会ではルミエールの脇にいて、雑談もしないで静かに酒を飲んでいたのをディオンは思い出した。
(普通の人たちには、なんでしゃがみこんでいるかわからないだろうな)
ディオンが少し無理をして、苦笑しながら建物の壁に手をついて立ち上がろうとした。
「無理をしないほうがいい、座ってなさい」
ライラはディオンの肩に軽くふれた。
そのタイミングは絶妙で、膝からかくんと力が抜けてまた座り込むことになった。
「ふむ、ところで君もこんな路地裏で何をしているのかな?」
「……ここに、星が落ちた」
ライラが自分の足元を見つめてつぶやくような口調で言ったのを聞いて、ディオンが驚いた。
この二人がいる場所は、先日の夜に、酔っぱらいが降臨した女神ラーダと遭遇して気絶させられていた場所であった。
「そう、あなたも見たのね」
ライラがまだじっと路地裏の敷石を見つめている。
ライラは魔法陣や仕掛けがないかを探っているのだが、ディオンにはわからない。
(魔法陣はなし。魔力の残留はわずかにある)
アベコウキがアンドレスの街の地面のかなり下にダンジョンを作成した結果、そのさらに奥深くにある魔力の塊から噴き出すように地上のアンドレスの街にも溢れ出ている。
女神ラーダが地中を通過しながら、この場所の魔力を吸収していったので、隙間ができている。他の場所よりも魔力の噴き出しが微弱な場所となっているのだった。
吟遊詩人ディオンは魔力の噴き出しが微弱なところに、川の流れが弱い岸辺に落ちた草などが流れつくように、しゃがみこんでいるという状態である。

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