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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 79

何度か短く整えたあごひげを撫でながら、ソファーに座ってマリーナの夫ジョエルは、愛人の村娘コレットを紹介した。旅について来て助手をしていたコレットが、妊娠したので連れて帰ったと説明した。
「マリーナ、しばらく彼女と暮らして俺の子を一緒に育ててほしいんだ」
マリーナはコレットの顔をじっと見つめる。
アベコウキは童顔のコレットの口元に小さな笑みが浮かぶのを見て、ひやりとした。
「で、マリーナ、その隣にいるぼうやは誰かな?」
ジョエルが立ち上がり、アベコウキと握手しようと近づいた。
「愚か者めが……」
マリーナがソファーに座ったままうつむいてつぶやいた声を、リビングにいた全員が聞いた。
マリーナが立ち上がり、コレットに近づき肩の上に手を置いてジョエルに話しかけた。
「この娘の腹の子が誰の子かわかったものではないではないか。妻の私をほったらかしにして、一緒に旅に連れまわした愛人の子を世話をせよとは……」
コレットの表情が痛みにこわばる。マリーナがコレットの肩を強くつかんだからである。
(あ、やばっ)
アベコウキが、マリーナを睨むコレットと動揺しているジョエルをちらっと見た。
「痛いっ、手を離してよ。ジョエルから優しい人って聞いてたから、会えるのを楽しみにしてたのに」
コレットがジョエルに、いかにも自分は被害者というそぶりで話しかけ、マリーナの手を払いのけた。
マリーナの目が細められ、口元に妖しげな微笑みが浮かんだ。
「……ま、マリーナ?」
自分の妻の見たことのない怒りの微笑と、リビング全体の空気が凍りついたような雰囲気。ジョエルはさらに困惑した声でマリーナに呼びかけた。
この世界で稼ぎの良い旅商人が他所に愛人をつくるのは、違法でもなんでもない。本妻が愛人に優しく姉妹のように対応するのが常識である。
妊娠して頼ってきた愛人を憎むのは、嫉妬深い女だと本妻としては反省したりもする。
しかし、旅商人だからといって、どの男性も他所に愛人をつくるわけではない。ジョエルが自分に愛人がいると以前からマリーナに話していれば、本妻のマリーナも心の準備ができていたかもしれないが、ジョエルは愛人がいることを黙っていた。
さらに、若い愛人のコレットが自分が妊娠していてジョエルの後継ぎを産む女で、本妻よりもジョエルに愛されると疑っていないので、どうやってマリーナよりも女として立場は上だとわからせようかと、内心では思っている。
そうした状況で、マリーナのなかには女神ラーダが融合している。ジョエルなどラーダは愛していないが、ジョエルはマリーナのことを一心に愛している男だと認識していたので同情はしていた。
しかし、ジョエルが妊娠した愛人を連れ帰ったのでラーダは落胆して、さらに激怒した。
愛人に手を払いのけられた瞬間、マリーナとラーダの融合した心に怒りの火が生まれた。
「ジョエル、もういいわよ。私、村に帰ってこの子を産むから!」
若い愛人のコレットは母親になった女の強気で、本妻マリーナに聞かせるようにわざと言った。
そう強く言えば、ジョエルが本妻としてマリーナにコレットを大切に扱うように説得するだろうと考えて言っている。
ラーダは愛した男を追って天界を捨て降臨した女神で、マリーナの心が同じ男を心底愛していると理解して融合した。
しかし、愛人コレットの言葉を聞いて、女の直感でコレットが旅商人ジョエルを愛していないことに気づいてしまった。
(この女が愛しているのは、自分の腹の中にいる子供だけ)

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