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奇跡の男と牝奴隷たち
官能リレー小説 - その他

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奇跡の男と牝奴隷たち 71

「表面に小さなつぶつぷの泡が出てきたら、すぐにひっくり返します。両面ふっくらと焼いたら、ちょっぴり強火で焼きます。中と表面の食感を少し変えるためです。他のお店に出しているものは強火で焼くのはお客様に出すときにお願いしています」
焼きたてをマルティナが皿に乗せてテーブルの上に出してくれた。
「どうぞ召し上がって下さい。その蜂蜜をかけるともっと甘くなって、おいしくなりますよ。よろしければ試してみて下さいね」
(なるほどね、パンじゃなくて、ホットケーキだったのか)
マリーナが蜂蜜をかけてしっとりとしたホットケーキに思わず「おいしい」と言ったのを聞いて、パン職人ヘルマンが満足そうな笑みを浮かべた。
砂漠の民エード族の石職人たちはパンの製法と生地を焼く石窯も、このアンドレスの街に伝えた。
火のかわりに発熱する石を使っていたらしいが、石が使えなくなったので、パン職人たちは、かまどを作って火を使うようになった。
発熱する石が使えなくなった理由が、パン職人たちはわからなかった。石職人たちが王都に招待されて去ったあと「使い方をまちがえたのだろう」と、パン職人のヘルマンはマリーナに、この街のパン職人の歴史を話して聞かせた。
パン職人たちは、石職人たちが腕前を認められて王都に招待されたと信じてきた。実際は捕らえて処刑されたことを知らない。
(街に石職人たちが配置してあった石像を破壊したり撤去したからだな、きっと)
アベコウキは、発熱する石が使えなくなった理由をそう考えた。
窯で焼くパンではなく、かまどの上に置いた鉄板に生地を乗せて焼いてみたりして、試行錯誤があり、道具も使いやすいように小さく北方の職人に作ってもらったものらしく、受け継がれてきたものだが、旅商人に頼んでも同じものが手に入らないという。
アベコウキは、それがただのフライパンではなく、強化されたフライパンだと見抜いた。
(火を使わなくても加熱できるフライパンか)
北公領まで旅をして金属製の品物を入手する旅商人もいないわけではない。しかし、今は失われた魔法の技術が使われている品物もめずらしい。見た目でわからないので廃棄処分されてしまうことも多い。
アベコウキはダンジョン内限定だが、特製のフライパンを作ってみることにした。
ダンジョンが発生させている魔力で加熱させられるフライパンがあれば、火を焚くかまどがなくても、加熱調理ができるようになる。
「コウくん、パン屋さんに行って、何か参考になった?」
「うん。おもしろいものがあった」
石窯やかまどでは薪を燃やすため、火力の調整が難しいが、特製のフライパンは、温度調整ができる。
アンドレスの街そのものが魔法陣として魔力を供給して、水の使用を可能にしている。だが、それ以外の仕掛けには魔力が供給されずにほとんど失われている。
アンドレスの街にある瞬間移動の魔法陣が不完全で、移動者からHPやMPを奪うのは、街のつくりが不完全だったことが原因だとアベコウキにはわかった。
かつての発熱する石が使えなくなった話や握りに魔法の術式が装飾されたフライパンが、火にかけられて使われていることから、アンドレスの街は魔力を発生させているが、魔力を使用するものや仕掛けに、魔力の供給が行き届いていない。地上のアンドレスの街とダンジョンのちがいは、そこにある。

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