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奇跡の男と牝奴隷たち
官能リレー小説 - その他

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奇跡の男と牝奴隷たち 70

アンドレスの街の、早朝の市場通り。
荷馬車から商人たちが、荷をアンドレスの商店を持つ商人の店に運んだり、露店商の店の前に商品を一緒に並べたりしていた。
商品の搬入だけでなく、必要に応じてその場で交渉して買いつけをして荷馬車に積み込んでいる。
仕事に一段落した商品たちが集まって、朝食を食べている露店がある。行った街や村の噂話などを交換しながら、なごやかに朝食の時間を楽しんでいた。
スープとパンしかメニューはないのだが、スープは日替わりで、パンは日が昇る前からパン屋が窯で焼いた焼きたてである。
アベコウキとマリーナは、空いている席で商人たちの様子をながめながら、スープとパンが来るのを待っていた。マリーナが焼きたてのパンのおいしさに笑顔を浮かべていた。
ダンジョンには窯や煙突はなく、煙を逃がす通気孔がない。ダンジョンでは焼きたてのパンが食べられないと思い、アベコウキはどうしたものかと考えていた。
「コウくん、パンのことは、私たちが考えてもわからないから、パン屋さんに行って聞いてみたらどうかしら?」
マリーナは<自由の広場>と早朝に市場通りの露店にパンを卸しているのが、同じパン職人の店であることを、露店の店員から聞き出した。
(人から上手に話を聞き出したりするこういうところは、俺は苦手だから、マリーナさんはすごい)
単純に見た目が美人だから能力値の「魅力」が高いわけではない。交渉や情報収集にも関係する能力だとわかる。
「<自由の広場>のほうは昨日でちょっと落ち着いたから、今日から私もコウくんのお手伝いするね」
ダンジョンを生活の場所にするための知恵は、主婦のマリーナのほうがアベコウキより家事に慣れている分だけ具体的なところに気がつく。
「でも、二人だけの秘密のところじゃなくなっちゃうのは、ちょっと残念だけど」
とアベコウキにマリーナは小声で話しかけた。
(実はその下に俺の本当のアジトが隠されて作られる予定で、ダンジョン一階は試作品だと知ったら、俺のアジトは、マリーナさんのアジトにされそうだなぁ)
アベコウキとマリーナは、アンドレスの街のパン職人の店に食事を終えて行ってみることにした。
「窯でうちのパンは焼いてませんよ。昔は窯で平たいパンを焼いていたらしいですけど」
パン職人の娘マルティナはそう言った。
厨房で実際に焼いて二人に見せてくれることになった。
「先に卵とミルクを先によくかき混ぜてから、麦の粉とマルハルの実の粉末を合わせたものを混ぜ合わせます。この粉の割合やミルクの量は内緒です。生地がぽってりするくらいで、かき混ぜすぎるとさらさらになってしまい、焼き上がったときにふっくらとなりません」
マルハルの実の粉末は、実をしぼった汁を乾燥させて作る。水によく溶けて甘い。
パン職人の娘マルティナが、アベコウキとマリーナの目の前で生地を作って見せてくれる。
それを少し離れたところで娘の説明や生地作りの様子をうなづいて見ているのはパン職人のヘルマンである。
生地ができるとヘルマンが二つのかまどの火加減を確認する。弱火と強火のかまどがある。
生地を受けとったヘルマンは手際よく、生地を焼き上げる。
「まず弱火のほうで生地を高めなところから焼き板の上に落とします。高めなところから落とすと、きれいな丸く広がります。丸くないと焼きむらかできてしまいますから」
マルティナが説明しているあいだに、フライパンの上の生地の変化をヘルマンはじっと見つめている。

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