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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 55

商業ギルドは鉱石を王国から買いつけてゆき、北公領の職人たちに貴族から依頼され加工を発注する。
南方の商人たちは職人たちに加工を発注することなく、完成品を貴族たちのあいだで売り買いして利益を得る。
もしも北公領がもっと大陸の南方にあったなら、自分たちの作成した武器や防具を装備して南方へ攻めこんでいたにちがいないと宮廷の官僚たちは考えていた。
南公主イグナートとその配下である闇商人たちは、ヴァイナモにとって仇敵というべき関係である。
西公主ダルア公は「世継ぎを作ることが公主のただひとつの役目ではないかね」とかつてヴァイナモと会談したときに答えた。ヴァイナモが公主としてどのようにあるべきか、と質問したときのダルア公のこの返答に深く失望した。
幼い頃から贅沢三昧で暮らしてきたダルア公は肥満した体を揺らしてよく笑う男だった。
かつて西域は石の加工に優れた職人たちの国であり北域と競い合い、また情報を交わし、よき盟友であった時代があった。しかし、砂漠化によって石の職人たちの時代が終わり、交易と耕作の時代になると支配者が変わったので、北との関係は疎遠となった。
(ダルア公は古き石の職人たちの血など一滴も流れてはいない男だ)
ヴァイナモはそう思った。
しかし、ダルア公がふがいないせいで、闇商人たちに先祖たちが盟友としてきた国が好き放題に荒らされるのはヴァイナモには許せないことであった。
(リシャール公が惰弱な金髪の孺子ではなく、猛き金髪の獅子であれば)
とヴァイナモは苛立つ。東公領のほうが西公領に近い。そして、かつて御前試合で戦ったエルシーヌが兵を率いて攻め込めば東公領を併合することもできるのではないか、とヴァイナモは思う。
ヴァイナモは、西公主ダルア公には期待していないが、その側近たちがまともであればと諜報員を派遣して調査し、闇商人であることが判明した評議会メンバーの暗殺を計画した。
(闇商人の数人を抹殺してもすぐに代わりの者があらわれるだろうが、南公主イグナートへの警告にはなるだろう)
アンドレスの街やその周辺は、砂漠化した地域のものと比べれば歴史が浅いが、西公主の直轄する街よりも古都といえる。
西域の石職人たちは北の職人たちの採掘の坑道作りの技術を地下通路に応用した。その上に王立神聖教団の教会が建っていたのは、エード族の信仰を持ったまま、表面上は隠していたのかもしれない。
王立神聖教団が設立された時代は北域、東域、西域との同盟が成立し、南域の帝国に対抗する意識が強く、異教に対する排斥運動があった。
南域の異教を王国が排斥しようとして、皮肉にも西域のエード族の信仰も迫害を受けた時代があったからである。
南域の帝国と対抗するために各国が同盟を結んだ時代に、どれほどの魔法技術を持っていたのか、正確な記録は残っていない。
(アンドレスの街そのものが、巨大な魔法陣として建造されていたとしたら?)
ライラが評議会の会議中にも考えていたのは、その過去の時代の魔法を発動させる方法だった。

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