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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 54

噂では色恋の腕前も一流であったとも言われているが真偽ははっきりとはしない。
「放蕩息子」と楽士の父親や親族から腕前を惜しまれていて、今でも王都へ帰れば宮廷楽士となれる立場ではあるのだが、旅芸人として暮らしている。
「しばらく会わぬうちに、バレンドルフが結婚していたのには驚いた。それも料理上手の相手とはな」
「ディオンも結婚すればいいじゃないか」
バレンドルフが照れながら酒を飲んだ。
「俺は美人と知り合う機会は多かったが、料理上手の美人とは残念ながら会えなかったのだよ」
吟遊詩人のディオンはそう言ってバレンドルフに酒をついだ。ディオンは、バレンドルフが兄のように慕っている関係の親友なのだった。バレンドルフの人づきあいの良さは、ディオンゆずりである。
この二人、血はつながっていないがとても気が合い似たところがある。
吟遊詩人ディオンは大陸の民族に伝わる音楽を聴き覚えている人物で、演奏で魔法を発動させる特技があり、旅をするために乗馬もできる。ただし、武芸に関してはまったく身につかなかった。
メトラはエード族の大神官となるために試練の儀式を受けた。ディオンはエード族の伝承と儀式の歌に興味を持ち、その旅に同行したことがある。
(ディオンが結婚しないのは、メトラのことを今でも惚れているからだ)
とバレンドルフは思っている。
平民よりも身分が高い宮廷楽士の御曹司とはいえ、名家の令嬢、それも神に身を捧げている聖職者とは身分ちがいで、王国の法律では婚姻は認められていない。
(この酒場に集まっている者たちはおもしろい。身分など関係なく、同じ料理を食べ、酒を酌み交わしているではないか)
ディオンは気分よく酒を飲んでいる。
「コウくん、そろそろおいとましましょうか」
「そうだね。おなかいっぱいになったし」
マリーナとアベコウキはルミエールのそばに行って「本日はお招きいただきありがとうごさいました」と頭を下げて挨拶をした。
「アベコウキに相談したいことができた。私に知識を生かして協力してくれないか?」
「いつでもいいですよ。ルミエールさん、おやすみなさい」
「親愛なる友に、いい夢を」
ルミエールがそう言って酒杯を上げると、一斉に拍手が起きた。
「マリーナ女史、おつかれさまでした!」
バレンドルフが拍手の中でもよく通る声で言った。
「みなさん、ありがとうございます!」
マリーナが感動して、目を潤ませながら一礼した。
宴会からマリーナたちが帰るときに拍手で見おくることを、ルミエールは決めて仲間たちに伝えておいたのだろう。
(統率力が高い人は、いろんなことができるな)
アベコウキは素直に感心した。
北領公ヴァイナモ。
東公主リシャールが繊細な貴公子という印象で貴族たちから見られているのとは対象的に、北領公ヴァイナモは筋骨隆々とした巨漢で、いかにも武人といった印象である。
王都の御前試合でルミエールと決勝戦で対峙した人物である。決勝戦で激闘の末にヴァイナモの大剣が折れてしまった。そこでヴァイナモが降参を宣言したので、ルミエールが優勝した。
ヴァイナモは、自分の作成した大剣が大陸で最高の傑作であることを世に知らしめようと御前試合に出場していたのである。
ヴァイナモは自分も鉱山で鉱石を掘り出し、工房を持っていて武器などを作成している。
剣は木刀を魔法で強化し、鎧は革鎧を魔法で強化するのが主流となっている。職人たちの仕事は貴族の装飾品の作成の依頼が多い。頑丈だが重い剣よりも細身で身を飾るための剣、つまり実用品ではなく工芸品の作成が職人たちに求められていた。
木刀の強化魔法や革鎧の強化魔法は大陸南方の商人たちから流れてきた技術で、その結果、宝石やアクセサリーの作成依頼が増え続けているのがヴァイナモはおもしろくない。

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