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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 53

(ここはなんだ、すごい展示品だった)
レギーナが本当に驚いて広場に戻ってきた。
諜報員として王都にも行ったことがあるが、展示品は王都のオークション級のものがいろいろあった。
それを貴族ではない普通の街の人たちがのんびりと見物している。
夕方の広場の営業が終わり、街の人たちを乗せた荷馬車が出発した。
「さて、俺たちも街に帰りますか。レギーナさんもとりあえずみんなと一緒にうちの酒場に行こう」
「はい」
酒場ではひとあし先に帰ったマノンが貸し切りにして、宴会の支度を整えると夫の帰りを待っていた。
あとルミエールとライラも先に店内で待っていた。
レギーナが広場にあらわれたのには、ライラと騎士団の調査員の二人が大きく関わっていて、ルミエールに何が起きたのか報告したあと宴会に来ていたのである。
騎士団の二人は僧侶メトラの留守にしている教会で待機しているので、宴会には来ていない。
「無事だったのね」
ライラがレギーナを見てぽつりと言った。
「あなたが私を逃がしてくれたんですね!」
朦朧とした意識の中、頬を数回叩いて「しっかりしなさい」と呼びかけて、開いた牢部屋の扉を指さして立たせてくれた人がいた。
その人の顔や声が、目の前のライラに重なった。
涙ぐむレギーナの頭を撫でたライラが、アベコウキの顔を見つけた。
するとレギーナから離れて、アベコウキの隣の席にすっと座った。
「街の秘密がわかった。魔法の通路」
ライラがアベコウキにひそひそと耳打ちした。
マリーナがそれを見て、一瞬、顔がこわばった。
「ちょっと、コウくん、二人でなんの話?」
「内緒」
ライラかそう言ってルミエールの隣に戻った。
「大変だったな、しばらく私のところにいたまえ。私はルミエール。この街の警備隊隊長をしている」
「ルミエール様!」
レギーナは諜報員として貴族の情報を知っている。
東公領主リシャールの妹、女性の身でありながら王都で行われた御前試合では、他の貴族の子息らから圧倒的な実力差を見せつけて勝利してみせた実績がある。また東公領主リシャールは次期宰相の噂が立つほどの若き王国の重鎮である。
レギーナが身分が違いすぎて一生会うことはないと思っていた貴族の中でも極めつけの名家の御令嬢。噂では王都を離れ東公領にいると聞いていたが、目の前で実際に会ってみれば、同性同名の別人とは思えない。
「その驚きかたは私の故郷のことを知っているようだが、私は今、一人の人間として、ここにいる。ルミエール隊長と呼んでくれたまえ」
「はい、かしこまりました」
「ところで、レギーナといったね。まあ、一杯飲みたまえ」
バレンドルフは、同情した目でレギーナを自分は近づかずに見ていた。声をかけたら自分が酔いつぶれるまで飲まされるのがわかっている。
「ルミエール様はかわらないな」
バレンドルフの隣でそう言ったのは、昼間に広場で陽気な曲を、美しい旋律で、小さな竪琴を使い奏でていた旅芸人である。
僧侶メトラが旅芸人に気がついて、向かいの席へやってきた。
「お久しぶりですね、ディオン。教会に顔を出さなかったので、わたくしのことなど忘れてしまったかと思いましたわ」
「いやいや、メトラ、忘れたわけではない。子供たちが一緒に踊ってくれたから、演奏を止めるわけにはいかなかったのだ」
宮廷の舞踏会でディオンが演奏すると「貴婦人や令嬢たちが演奏に聞き惚れて踊りを忘れてしまう」と言われた演奏家であった。
宮廷楽士の家系に生まれ、少年のうちから才覚ありと認められ、他の大人たちと一緒にディオンは演奏してみせた。

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