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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 50

僧侶メトラが教会の庭にあった女神像以外に展示したものは一枚の石板である。
見た目は地味で、これには商人たちは立ち止まることはなかった。
しかし、一人の子供が石板に指をふれたあと、他の子供たちにもさわらせていた。
ふれた瞬間に石板から頭の中に砂漠の満天の星空が広がって、自分がその下にいるような気分になる。
子供たちの親たちも、子供に言われてふれてみて、感動していた。
石板に情報が記録されていること、そんな技術があることをマリーナが以前に感動していたので、僧侶メトラは展示してみたのだった。
商人のひとりが家族づれの客がやたらと感動しているので、自分もふれてみた。
寺院の遺跡で石碑や石板が破壊されていたのを思い出して、こんなことができるのならば、どれだけのものを自分は見過ごしてきたのだろうかと心から反省した。
傭兵バレンドルフは、地下通路に何も展示しなかった。しかし、評議会メンバーのうちで清掃から客の移動手段の手配、旅芸人の手配、出店希望者の商人の選別など広範囲で、この広場づくりに協力した。
当日は迷子の子供を親に会わせてあげたりもしていて、バレンドルフの手際のよさに、ルミエールは感心した。
(バレンドルフならば兵をあずけても大丈夫だ)
マリーナは、アベコウキと手をつないで広場を見物させていた。
「コウくん、お祭りってこんな感じ?」
「バレンドルフさんを呼んできて。急いで!」
アベコウキが立ち止まって、マリーナに叫んだ。
バレンドルフが抱き上げて空きの建物に運びこんできたとき、かなり悲惨な状態だった。
地下通路の肌寒さや雨の日の対策として荷馬車には広場の来客用にコートを用意しておいたのだが、なぜかそのコートの下は全裸だった。
背中には鞭打たれたような肌が裂けた傷がいくつも走っている。手首にも荒縄で縛られていたのか擦り傷がついていた。
左胸の乳房には烙印がつけられていて、それは蛇が二匹錫杖に絡みついている紋章であった。
街から荷馬車で広場まで来たが、気絶したらしい。
マリーナは教会にいた僧侶メトラを連れてきた。
僧侶メトラと傷だらけの女性をみて涙目のマリーナが、若い女性のコートを脱がせて魔法で治療するあいだアベコウキとバレンドルフは建物から出ていた。
治療の魔法で他の傷はすっかり痕もなく癒えたのに、乳房につけられた烙印だけが消えない。
「呪詛の烙印ですわ、なんて酷いことを。しばらくすれば目をさますでしょう」
「そうか」
僧侶メトラとバレンドルフが話していると
「いや、まだ終わりじゃない。アブラーン!」
眠っている女性の顔をのぞきこんだアベコウキが、ひたいに手のひらをあて解毒の魔法を発動させた。
マリーナはひどく落ち込んで、建物のすみに置いた椅子に座って黙りこんでいた。僧侶メトラやバレンドルフは人の傷を普通の街の住人たちよりも見慣れている。
「媚薬が使われていたのですか?」
「そのおかげで疲れきっていてもここまで来れたんだと思うよ」
アベコウキがメトラの質問に答えた。
「街で媚薬が使われたってことか?」
バレンドルフは、酒場を経営しながら街の情報を常に収集している。
アンドレスの街へ東公領からの絵画搬入があり、通常よりも警備を厳重に行っていた事情から、不審者の情報があればすぐにつかめていたはずであった。
「その娘が目がさめたら、詳しい話を聞かせてもらうとして、今は夕方の広場閉鎖の時間まで客が騒ぎ出さないようにするか」
バレンドルフは僧侶メトラとマリーナに眠っている犠牲者をあずけて広場に戻っていった。
広場の開設初日に来ていない街に残っているライラと連絡を取っておきたいところだが、バレンドルフが動けば目立ってしまうだろう。

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