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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 49

ライラは膝の上の毛玉を撫でながら、新施設については何も考えていなかった。
別の考えごとをしている。
領主クロコバルコは上納しないで金が転がりこんでくることに安堵しながらも、
(利益が出なければ、どうしてくれようか)
と考えていた。
進言したマリーナは子供のころに見た旅芸人のことを思い出していた。三匹の犬を連れた少年が合図をすると犬たちが芸をしていた。
それを見たときに犬たちがかわいらしいと思った。
まだマリーナが子供の頃は市場通りの店数は今ほど多くはなく、旅芸人たちがたまに来ては、芸を披露したり、知らない詩歌を聴かせてくれたりしていた。
今は店数が増えてにぎやかだが、旅芸人はせっかく街に来ても、芸をするのに適していない場所だとわかると、別の街へ通り過ぎてしまう。
エルシーヌにとって、アンドレスの街の住人たちの広場がどんな意味を持つ場所となるか、エルシーヌ自身もまだ気がついていなかった。
一ヶ月後に<自由の広場>とマリーナが命名した元廃村には、開設初日、多くの客たちが集まっていた。
街の住人たちも訪れているが、他にも教会の地下に展示されている絵画を見るために、王都や東公領の商人たちが訪れていた。
展示物の配置や準備に領主クロコバルコは興味がなく口を出さなかった。
一番奥の広間に、少女の肖像画が展示されていた。
クロコバルコの提供した風景画も途中にあるのだが商人たちは見るが立ち止まることなく過ぎてゆく。
クロコバルコが領主に就任してまもなく商人から記念に買った風景画なのだが、それと類似する別の画家の高値の作品があることをクロコバルコは知らない。
純白のドレスを着て、豪華な装飾の椅子に座って微笑を浮かべている少女の肖像画を見た商人たちは目を奪われ、言葉を失い、思わず深いため息をついてその場から動けなくなっていた。
それは、実はエルシーヌの七歳の頃の姿だった。
「街の住人たちのために展示できる品物をひとつ送って欲しい」と手紙を東公領へゆく商人にあずけたところ、東公領主の兄であるリシャール公が、エルシーヌが隠すように館にしまってあった絵画のことを覚えていて商人に運ばせたのだった。
「きれい」
「かわいい」
「お姫様だっ!」
子供たちはそれぞれの感想を口にして目を輝かせて感動している。
エルシーヌは展示をためらったのだが、領主クロコバルコ以外の絵を見た評議会メンバーは、この絵は一番奥の広間に展示するべき作品だと言って譲らなかった。
領主クロコバルコは、自分の提供した絵画が一番目立つ場所にあると思い込んでいたのだが。
(うん、まじで天使そのもの)
アベコウキも絵画には興味はなくても、そんなことを思ってしばらくながめていた。
この大陸には、天使という概念がないのだが。
この肖像画を描いた画家は、のちに国王の肖像画を描いたのだが、それを見た国王が激怒して投獄し、謎の死を遂げている。
この画家は人間だけでなく、たとえば小鳥でも精密にかつ繊細に描いた。
僧侶メトラは肖像画を見つめて、エリシーヌの少女の頃の姿をなつかしく思い出していた。
画家が美しく描いたのではなく、美しいものをただ正確にとらえたのだとメトラにはわかる。
バレンドルフの妻マノンはこの肖像画が気に入ってしまい、広場で毎日サンドイッチを売りたいと夫に相談したほどであった。
ライラの展示した真っ赤なドレスは、訪れた女の子たちに強い憧れを残した。フリルの細やかさも、デザインも普段見慣れている大人の服とは、かなりかけ離れた豪華なものであった。
自分の知らない大人の女性たちが、美しくドレスをまとっている世界があるとそれは教えた。
これにも商人たちは足を止めた。金糸の刺繍に光の反射で本物の金を細く加工してあることや、布地がなめらかで、これほどのドレスを王宮の舞踏会でも見たことがないと感嘆していた。

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