PiPi's World 投稿小説

奇跡の男と牝奴隷たち
官能リレー小説 - その他

の最初へ
 36
 38
の最後へ

奇跡の男と牝奴隷たち 38

ライラが両手の手のひらを奇妙な枝の木に向けた。
「ル・マルトル!」
アベコウキが大声で言うと奇妙な木が七色の光に包まれて、光がはじけると、地面にころんと手のひらに乗るぐらいの大きさの茶色い木の実が転がった。
「だから、強力な火炎系はダメだろ、火事になるじゃないか」
ライラにアベコウキが言った。
「コウくん、ちょっとこっちにいらっしゃい」
家の中に逃げていたマリーナが窓を開けて、奇妙な木が木の実に戻ったのを見ていた。ライラにぺこりと頭を下げて、アベコウキを手招きする。
「すまない、ちょっと待ってて」
ライラがうなずいて、庭に残された木の実をしゃがんで指でつついていた。
「これは大昔に生えていた植物の木の実。よく人になつくはずなんだけど」
「攻撃されてた」
「男嫌いなのかもしれない」
テーブルに木の実を置いて、ソファーに座ったライラにアベコウキが話している。
「コウくん、こんなの家の庭いらないから、捨ててきて」
マリーナがアベコウキの隣に腰を下ろして、木の実をじっと見ている。
「捨てるなら、ほしい」
ライラが言うとマリーナがにっこりと笑って「どうぞ」とすかさず返事をする。
ライラは膝の上に木の実をのせて、猫を撫でるような感じで撫でていた。
ライラはこの木の実のことを、なんとなくなつかしい感じがしていた。召喚される前のことはなにもおぼえてはいないのに。これは異界の木かもしれないとライラは思った。
これは、かつて大陸の南方と中央を隔てていた大樹海の中にまざって生えていた植物である。大厄災で焼かれてしまった。
午前中、アベコウキはライラの埋まっていたあたりの穴をまた泥沼にしてならしておいた。地面の穴はすぐに埋まったのだが、そこにマリーナの見ている前で落ちていた石ころでガリガリと魔方陣を描いていた。
昼食を済ませたあと、マリーナがアベコウキに呼ばれて庭をみると、小さな木の芽が魔方陣の中央、ライラが埋まっていたあたりから生えていた。
「コウくん、なんか、木の芽ってかわいいね」
それが午後には奇妙な枝の木になった。
そして木の実が収穫されたのだった。
アベコウキ自身の呪文リストには、過去に[賢者]だった頃に習得したと思われる魔法がいくつもずらりと並んでいる。
アベコウキはまったく気にしていないが、庭に魔方陣を描いて木を生やしたのは召喚魔法である。
「木の実にしたら毎日治癒の魔法をかけ続けると、卵みたいに割れて中から何か出てくる予定だったんだけど」
「やってみる」
未練たっぷりのアベコウキに、ライラが言った。
(返してくれそうにないな。前に木の実が割れて出てきたのは、MP回復の宝石だったのに)
ライラと握手して、約5秒ほどで呪文アブラーンを呪文リストに入れ終わった。
ライラはHP回復(小)(大)の呪文や火炎系の攻撃魔法の呪文を持っていた。僧侶メトラのときのように空きがあっても入れられないということがなくて、アベコウキはほっとした。
ライラがHP回復の呪文を持っているのは、生気を奪いすぎて餌の人間が死にかけてしまったときに、生かしておくための応急処置に使うためである。
ライラは、奇妙な木から収穫された木の実を、大事そうに抱えて持ち帰った。
呪文アブラーンは即死でなければ、たとえば痺れ薬などにも効果がある。あと、毒蛇にかまれたり、蜂に刺されたときにも効果がある。

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す