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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 32

バレンドルフが警備隊屯所ではなく、気持ちを落ち着かせてから報告に行くことに決めて、夕方の開店前の酒場に戻ってきた。
「あの、すいません。お酒なしで食事だけまだ作ってもらえますか」
マリーナと手をつないでアベコウキがやって来た。
「え、ああ、簡単なものであれば」
「よかった。コウくん、まだ食堂やってるって」
バレンドルフはやって来た客がマリーナだと一瞬、わからなかった。
評議会の会議のときはマリーナは笑顔を見せたことがない。
(ああ、この人もこんな優しい顔をするのか)
僧侶メトラが「解毒薬」の話を聞いた翌日、マリーナの家に来ていない。謝礼として教会の別の僧侶が金貨5枚、マリーナに届けに来た。
その金貨を使って「たまには外食にでも出かけましょうよ」とマリーナがアベコウキを連れ出した。
「よく食堂だとわかりましたね」
料理を乗せた皿をバレンドルフが並べながら接客用の笑顔でマリーナに話しかけた。
「うちに来てたおねえさんがね、おいしい食堂があるって僕に教えてくれたんだ」
アベコウキが子供っぽくバレンドルフにかまってほしい感じで話しかけた。
(女性か、さて、誰だろう?)
「コウくん、おいしそうだよ」
マリーナは料理好きなので、並べられた料理がちゃんとひと手間がかかっている気づかいがわかる。
「妻が奥の厨房で作ってるんですが、俺は料理は味見専門でしてね、おいしいのは保証しますよ。楽しんでいって下さい」
そのとき、もう一人、店内へ客がやって来た。
「すいません。今日の昼間の分の料理は終わってしまって。夜に酒場が開店するので」
「安心しろ、料理を食べに来たわけではない」
ロープ姿でフードを深くかぶっていた客がマリーナとアベコウキから離れたテーブルに着席した。
(ん、なんだ、傭兵の顔色がかわったぞ?)
すぐにバレンドルフは営業用の笑顔に表情を戻して「どうぞごゆっくり」と言うと奥の席の後から来た客のところへむかった。
「コウくん、あんまりチラチラむこうを見ない」
料理を食べる手を止めて、マリーナが言う。
「ちょうどよかった。警備隊屯所に子供は入れてもらえないからな」
「ちょっと、コウくん、お料理食べかけ」
「ちょっと話をしてくる」
「もう、なんなのよ」
マリーナはアベコウキについてこないで料理をちょっと不機嫌そうに食べた。
「ねぇ、傭兵のバレンドルフさん、そのひと、警備隊の人?」
「うわっ、なんだ、びっくりしたな。悪いな、ちょっと大事な話をしてるんだ。マリーナさんのところに戻ってくれないか」
バレンドルフは優しげな口調でアベコウキに言う。
「その子、お前のことをたしかに傭兵のバレンドルフと呼んだ」
店内でもフードをかぶったままの客が声を聞いて女性だとわかった。
「そうか、君がメトラが話していた子だな」
「うん。はじめまして、エリシーヌ様」
かぶっていたフードをどけると、金髪の涼しげな目をした美女が顔を見せた。
「ええっ!」
マリーナがあわてて席を立って走ってきた。
(気になってずっと見てたな)
「そうか、メトラさんが君にここを教えたのか。たしかに前に食事を出したことがある」
バレンドルフが話かけてきた。
「そうだよ」
アベコウキがそっけない口調で受け渡した。
「す、すいません、お話中に、この子が」
「マリーナ女史か、ちょうどよいところで会えた。二人とも座りたまえ」
エリシーヌが言い、立ち上がったバレンドルフがマリーナに椅子を少し下げて座りやすい位置にした。
(傭兵というか、執事のような身のこなしだな)
「マリーナ女史、酒でも一杯飲むかね」
「いえ、この子もいますので」

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