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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 31

「その薬の材料に関する情報は誰?」
「僧侶メトラ様と聞いている。試作薬の調合作成はメトラ様が任されているそうだ」
賭博場拉致監禁事件の被害者の治療を、王立神聖教団の僧侶長メトラが任されていたのはライラの把握している情報である。
「解毒薬」の材料や作成方法を僧侶メトラが王立神聖教団の持つ情報からエリシーヌに進言したものであれば、王立神聖教団の資金源である貴族、その貴族から利息だけを回収して金銭の貸しつけを行っている闇商人による罠の可能性もありえる。
商業ギルドから闇商人に違法な手段でしか入手できない品物の受注と受け渡しを王立神聖教団が証言者と現物を押さえれば、商業ギルドとエリシーヌに対して処罰を宮廷へ申請できる。
闇商人が貴族経由で王立神聖教団に情報を流すとすれば、できない話ではない。
僧侶メトラが自分の故郷のエード族旧教団の組織から、薬の材料の情報を得たのであれば、罠である可能性はないと予想できる。
僧侶メトラがなぜ王立神聖教団の僧侶長をしているのかは思惑がわからないものの、旧教団の最高位である大神官であることは、商業ギルドの情報網でつかんでいる。
(でも、情報の元がエード族であればエリシーヌを巻き込まぬよう極秘で、エード族の祈祷師にでも材料を調達させて薬を作成して、王立神聖教団に売りつけてやればいいのに)
それで得た金をエード族の仲間に分け与えるなり、王立神聖教団に対抗する教団設立の資金にするなり使い道はあるはずだとライラは考える。
エリシーヌに進言し、商業ギルドのつてを使ってまで「解毒薬」を作成する目的は何かと考える。
(それは本当に「解毒薬」なのかもわかなくなってきた。王立神聖教団ではなく騎士団に薬を渡すのはエリシーヌの案だと思うけど)
騎士団と商業ギルドの関係は親密ではないが、疎遠でもない。騎士団にとって喉から手が出るほど必要な薬なのは間違いない。商業ギルドが騎士団に恩を売るには悪い話ではない。
騎士団と王立神聖教団の関係は、王の右手と左手とも呼ばれる王都の組織で中立を保ってきた。
エリシーヌは騎士団との関係性が強く、メトラは王立神聖教団に飼われている身である。
(メトラは王立神聖教団を裏切り、騎士団との関係を持つ。これなら納得できる。メトラは凋落の一途を辿るエード族の地位を確立するためならば、どんな組織でも利用するはず)
騎士団と王立神聖教団が法の平等性の前に対立すれば、誰か利を得るか。
(せめて、騎士団に王都を占拠して脅してでも勅命を得て、王立神聖教団を壊滅させる愚かで乱暴な竜巻のような人物がいれば、その後の鎮圧でエリシーヌを将として各地の領主に呼びかけ進軍すれば、エリシーヌを女王にできるのに)
ライラが椅子から立ち上がると「役者が足りない」とつぶやいた。
バレンドルフはライラが、どうやってエリシーヌの窮地を好機にくつがえすかを考えているにちがいないと、黙って本棚をながめていた。
騎士団と王立神聖教団が対立して連携が乱れたら、どちらの組織とも対立している闇商人が動きやすくなるだけだと、ライラは判断した。
さらに違法薬物の作成と人体実験は騎士団とは関係なく、エリシーヌの独断による行動として、騎士団と王立神聖教団は和解すると推測した。
「エリシーヌ様に伝えて。騎士団で毒物の犠牲になってしまった騎士たちのことはいたましいことですが、薬は提供せずに静観なさって下さい、と」
バレンドルフは「わかった」と返事をしたが、笑顔はなかった。
(バレンドルフは私のことを冷酷な女だと思ったにちがいない。でも、これが最善の策)

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