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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 30

闇商人は他の商人たちとはちがって脱税しているために、王国の流通している金の流れを止めている者たちである。
なぜ脱税をするのか。単純に納税分の金を抱えこみ私腹を肥やすためではなく、違法な手段で金を稼いでいることを隠す必要があるからである。
エリシーヌは街から闇商人を摘発し追放した実績がある。だが、商業ギルドが貴族たちに貸し付け続けている資金とは、闇商人が商業ギルドに上納金として納めている金である。納税するよりも上納金のほうが安上がりなのだ。
上納金を納めない闇商人を王国騎士団は捕縛する。商業ギルドは高額の納税を行うことで国庫を潤す。
王国騎士団はすべての運営資金を王命により国庫から下賜されている組織である。そのため王国騎士団を闇商人でも商業ギルドからも外れて活動している者たちは、王国騎士団の騎士を「商業ギルドの飼い犬」と罵る。
エリシーヌは東公領主の妹という領地を持たない貴族というだけの立場だと自分の立場を考えている。
商業ギルドにとって領地を持つ貴族は客であるが、エリシーヌという個人は客ではない。
エリシーヌが騎士団に叙任を断っていなければ、商業ギルドからは最強の制裁者として利用価値を認められていたはずである。
しかし、エリシーヌが選択したのは地方の街の警備隊長と評議会メンバーという立場であった。
他の貴族たちの令嬢たちのように貴族間の政略の美しい道具であったとしたら、または、騎士団を統括する商業ギルドにとっての最強の制裁者であったとしたら、無二の親友のメトラと共に人生を歩むことはできなかっただろう。
まだ子供だったエリシーヌとメトラは誓いを立てたのだ。
現在の国王により、今は離宮で鳥かごに飼われている小鳥のように日々を過ごしているかつて王都から逃れようとした王女を自分たちの仕える女王として戴冠させることを。
エリシーヌとメトラの命を救うために、レティシアは離宮に戻ることを選んだのだ。
そのためならば、清濁混ざりあった商業ギルドとも手を結ばなければならない。
この街の闇商人の追放劇は、商業ギルドにとっては使い道のない荷物の虫けらを始末するという意思表示をエリシーヌが表明した行動であった。
私利私欲のために国庫を散財している貴族とその貴族たちに享楽を提供して民に仇をなす不逞の輩をこの国から粛清する。
王都の宮廷は貴族どもの蜘蛛の巣の中心であり、いくら末端の糸を断ち切ったとしても、蜘蛛がいる限り一夜にして巣は修復されてしまう。
だが、蜘蛛を焼き払う戦の火はまだ燃えていない。
(ここで終わらすわけにはいかない)
だが、エリシーヌの凱旋への道を絶やすには一滴の雨粒ほどの揺れ、エリシーヌが違法な行動を行っているという情報が、蜘蛛の巣の末端である西領公主の配下である闇商人たちの評議会に伝わればいい。
闇商人は商業ギルドの持つ権利を奪い、貴族という餌を干からびるまで吸いつくす目的のため、暗躍している。
闇商人ギルドの派閥の暗躍を商業ギルドとしては抑制し、かつてのように服従させたいと望んでいる。エリシーヌの「解毒薬」と「人体実験」の計画に闇商人の手による関与はあまりにも「無謀すぎる」と宿屋の元客室の一室を書斎として模様替えして使っている若き才女ライラは書物を閉じてつぶやいた。
ライラの癖は一人で部屋で読書をしながら考えを練ることであった。
警備隊屯所のエリシーヌからの伝言を、酒場の経営者にして評議会メンバー、元警備隊兵士訓練教官バレンドルフが訪問して伝えた。
ライラは訪問客と会うのを「時間の無駄」と言って好まないが、エリシーヌとバレンドルフだけは例外なのであった。

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