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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 21

「ああ、荷馬車はね、早朝のうちだけは乗り入れできるのさ。市場で荷をおろした荷馬車は、宿屋の裏手の馬車置き場にあずけておくことになってるよ」
市場通りの露店で、体全体がふくよかな中年女性が木の丸テーブルに、皿にのせたパンとつまみの干した果実、口当たりのよい果実酒の入ったカップを置きながら教えてくれる。
貴族の館の中庭にテーブルと椅子を置いて客人とお茶の時間を楽しむことがあるが、それに似て市場の一部を使い野外で飲食できるようにしている。
(この街は貴族の習慣を平民がふだんの生活の中に取り入れているのか。かわった街ではある)
視察に来た二人は市場通りで軽い食事を済ませ、街の中央にある領主クロコバルコの邸宅を訪問した。
街で暮らす平民の暮らしを見物して、半分貴族のような習慣を街に広めている領主とはどのような人物かと興味を持っていたのだが。
クロコバルコは初老の痩せた少し背丈がある男性で紳士というよりも、貴族の館の老執事のような印象を女騎士は持った。
騎乗禁止や馬車の使用時間の規制などについてたずねると、問題があったのでしょうか、とやたらと気にしながら「評議会で決定したことを実施しており多数決なので議員全員が問題があったとして責任を追及されるのは困ります」などと言った。
女騎士と従者がクロコバルコを「無責任などこにでもいる領主」と内心では判断を下した。我が館に宿泊してほしいというクロコバルコの招待を二人は丁重に断った。
評議会の議席を持つ人物について領主クロコバルコから聞き出している。
また王都の騎士団より評議会メンバーの一人で警備隊隊長のエリシーヌ宛の書状を手渡すように命じられているため、警備隊屯所に二人は行ってみた。
「これは、王都の騎士団の施設とそっくりですね」
小声で従者が囁き、女騎士はうなずいた。
(ああ、そうか。このアンドレスの街は王都を再現しようとしているかのようだ)
「君たちはおもしろいセンスを持っているな」
執務室で二人に面会したエリシーヌはそう言った。
「視察官の役目は多忙な王都騎士団の諸君には不本意かもしれないが、本来の役目ではないとはいえ、今回の視察でアンドレスの街が気にいったなら、赴任と滞在の申請を私に申し出てくれたまえ」
書状を渡すと短時間で面会は終了した。
(どういう意味だろう。私たちが王都の騎士団に不要な人材という意味か、エリシーヌ様がアンドレスの街へ私たちを部下としてほしいという意味か)
視察官二人のために街の案内役として、エリシーヌが執務室に呼んだのは兵士見習いアルベルだった。
二人はキジム族の血を継ぐ者と対面するのは初めてだった。
(まだ子供ではないか。エリシーヌ様は、こんなに幼いうちから人を育成するのか。美しき薔薇のような人。厳しさの荊を持っていらっしゃるようだ)
エリシーヌがたまたま街で見かけてアルベルを保護しただけという事情を知らないので、そのように女騎士の従者は考えた。
夫が留守の人妻マリーナの家に滞在することになったアベコウキは、翌日から僧侶メトラの訪問を受けることになった。
マリーナの機嫌はななめだった。
アベコウキと僧侶メトラが毎日、自分のわからない話を親しげに交わしているのを三日目まではそばで聞いていたのだが、魔法に関する話題はマリーナには興味が持てなかった。
僧侶メトラが帰ったあと、アベコウキは甘えたふりをして近づこうとするのだが、機嫌が悪く避けられてしまう。
僧侶メトラが来るようになってからは、マリーナはリビングのソファーで毛布をかぶって眠り、アベコウキの使わせてもらっている寝室のベッドで一緒に眠っていない。
(せっかくこの家にいるのに、これはいかん)
現在7日目、これが習慣になってしまうとマリーナとの関係を深めるのは難しくなってしまうとアベコウキは考えていた。
「しっかり私の説明を聞いていただいてますか?」
魔法の法術の基礎すらアベコウキが知らないと僧侶メトラは知って、驚いて毎日講義をしている。
同じ知識の用語やイメージがつかめていないと話を聞いてもおたがい理解できないと僧侶メトラは判断したらしい。

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