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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 176

会議中、ルミエールを驚かせたのは、かつての戦争で使われた髑髏の兵士が、再び西公領のオーリッサの都で作成されたことではなかった。
「骸骨が歩いている情報よりも、旅人をさわると病気になるかもしれないっていうへんな噂を信じて、旅人にいじわるして追い出したり、旅商人が来ないから品薄だと、やたらと値上げして儲けようとしている人が、アンドレスの街以外にはけっこういるってことのほうが、大問題なんじゃないかな。皇子ジョルジュはどう思う?」
とアベコウキが発言したことであった。
ジョルジュは青ざめた顔で、思わず立ち上がると、隣にいるマイリスを見つめた。
マイリスは驚いてジョルジュを見上げていた。
酒造り職人の娘マイリスは、トレスカーナの街に来る前のジョルジュの過去について、あえて聞き出そうとはしなかった。何か他人に話したくない事情があるのだろうと、トレスカーナの職人たちも聞き出そうとはしなかった。
三年前の嵐の日に、高熱でふらふらになりながら、街の酒場にジョルジュはやって来た。
(クラウセスタ王国の双子の皇子……ジョルジュ……失踪中の皇子……)
僧侶メトラは、クラウセスタ十二世が後宮の愛妾ではなく侍女に生ませた、双子のエクトールとジョルジュという名の皇子がいることや、現在は皇子ジョルジュは王国から失踪中で、死亡説まで宮廷では囁かれていることを知っていた。
ルミエールが神聖教団にメトラがいるという情報をつかみ、アンドレスの街に僧侶長として呼ぶまでは僧侶メトラはクラウセスタ王国にいたからである。
バレンドルフは、クラウセスタ王国の王都エルンストや宮廷内の噂や情報などは知らない。
マリーナも西公領でずっと暮らしているのでクラウセスタ王国の情報には疎かった。酒造り職人の娘マイリスも同様であった。
ルミエールは、ジョルジュの表情を見て、目の前にいるのが失踪中の皇子ジョルジュだと確信した。
ルミエールは、人の気持ちを察する直感力が鋭い人物である。
北公主ヴァイモスが騎士団や神聖教団まで使って王国内を探索した皇子ジョルジュが、なぜ西公領の酒造り職人の街に暮らしているのかまではわからなかった。
「マイリス、ジョルジュはトレスカーナの街で生まれ育ったのか?」
「いいえ、三年前からトレスカーナに来て暮らしています」
ルミエールは、侍女ニコルがクラウセスタ十二世と謁見のあと、宮廷で神聖教団による裁判の結果、後宮に幽閉され「病死」と記録上ではなっていることを知っていた。
「皇子ジョルジュ、あなたの母上のことは私も残念に思っている。あなただけでも、今、無事に生きのびていてくれたことを、私はうれしく思う」
その発言を聞いた僧侶メトラの表情が一瞬険しくなったのに気づいたのは、アベコウキだけだった。
ジョルジュをふくめ、アベコウキ以外はルミエールの顔を見つめていたからだった。
このルミエールの発言の意味がわかったのは、僧侶メトラとジョルジュだけである。
クラウセスタ十二世に対する造反の意思。
「ルミエール様、俺は母親を見棄てて自分だけ逃げた男です」
ジョルジュが胸の奥にたまっていたものを吐き出すように、ルミエールに言った。
一緒に逃げようとジョルジュは説得したが「私はエクトールに会いに行く」と侍女ニコルは譲らなかったのである。
「皇子ジョルジュ、それは違う。母上はあなたを生かしたかったのだろう」
とルミエールは言った。

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