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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 170

途中で狼の群れに遭遇することなく、丘陵地帯から平地を進んでいた二人は、狼の群れに出会わなかった理由を見ることになった。
オーリッサの都から歩いてゆく骸骨の列に狼たちが群れで、餌が歩いてきたので、襲いかかっていたのである。
「人が襲われてる!」
マイリスが遠くを指差した先を馬を止めたジョルジュが首をかしげた。
(おかしいぞ。なんで走って逃げないであの人たちは一直線になって、ただ歩いているんだろう?)
「マイリス、俺はちょっと様子を見てくる。ここで待ってて」
「ジョルジュくん、気をつけて」
「ああ、わかってる」
ジョルジュがマイリスを安心させるため笑顔をみせてから、日の降りそそぐ平地で馬を疾走させる。
ジョルジュには、長蛇の列が目指す先頭の方角には特にそれらしいものは見当たらないが、列の末尾の方角にはオーリッサの都の建物が見えている。
(オーリッサの都から来たのか。なら、あれはディオンさんから聞いた王国の調査団か。それにしても、大人数だな)
状況が目で確認できる距離まで近づいて、驚いたジョルジュは馬を止めた。
骸骨の群れが歩いて行く。それを狼は襲っているのだが、骨の腕で殴打さられた狼が地面に転がる。骸骨は狼を無視してまた前進を開始する。別の狼が飛びかかり、折れた腕の骸骨に腹を刺されている。そんな状況が一列に進んでいく骸骨の列のあちこちで繰り広げられているのだった。
ジョルジュは巻き込まれないうちに、マイリスの待つ場所まで急いで戻ってきた。
骸骨の列が通りすぎるのを待つしかない。
マイリスに見てきた状況を、ジョルジュはできるだけ落ち着いて話そうとした。
「骸骨が歩いている?」
マイリスが首をかしげて黙りこんだ。
「とにかくあれが通りすぎるまでは、ここで待つしかなさそうだ」
ジョルジュとマイリスは、夕方になっても骸骨の列がまだ通り過ぎないので、狼が自分たちのほうにやって来ないか警戒しながら、その場で野営することにした。
心配するマイリスを眠らせ、ジョルジュはたき火の火を絶やさぬようにしながら朝を待った。
翌日、朝日が昇る頃には、骸骨の列は移動してもう見あたらなかった。
「マイリス、急いでここを離れよう」
骸骨と戦って殺された狼の死骸が転がっているそばを、二人の乗った馬が走り抜けた。
「水とパンだけならあるよ。あんたら、どこから来なすったのかね?」
ここで吟遊詩人ディオンは二人に、その宿場街よりも南にある村や街から来たと言うように、と教えておいた。
「そうかね。……お代は先払いで頼むよ」
酒場の客は、ジョルジュとマイリスしかいない。
「自分たちの居住地より北から来た客には、一杯の水も売ってくれない店まである」と吟遊詩人ディオンは、旅の途中で見かけたことを二人に話した。
酒造りの職人の街トレスカーナの値段よりも、旅に必要な保存食でさえ、値段は三倍に値上がりしていた。トレスカーナでは、酒造り用の水以外は、誰でも飲みたいだけ井戸から汲むことができる。しかし宿場街では、水さえも一杯ずつ売られていて、井戸には余所者が勝手に汲めないように見張りが立っている。馬に飲ませる水にも料金を請求された。
(聞いてはいたけど、ひどいことになってるわね)
マイリスがあきれながら、ジョルジュから預かっている金で買い物を済ませて宿屋に戻ってきた。
「ジョルジュくん、泊まるのやめない?」
「俺はかまわないけど、マイリスは平気?」
「ここにいたら腹が立って眠れなくなるわ」
旅商人が来るのが減っているにしても「この値段で嫌なら他で買え」と雑貨屋で言われたらしい。

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