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奇跡の男と牝奴隷たち
官能リレー小説 - その他

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奇跡の男と牝奴隷たち 167

西公領に潜伏していた工作員サンダリオと次期宰相の噂もある貴公子リシャールのちがいは、サンダリオのように安易に魔導書に記されている呪術を試そうとはしなかったことである。
商業ギルドの女首領イライザよりも先にオーリッサの都を訪れていたリシャールが、銀行やダルア公の邸宅から、残された金品に手をつけずに王都エルドニアに向かったのは、魔導書を手に入れたことを誰にも感づかれないようにするためだった。
マトゥの日記がオーリッサの都のサンダリオ邸にあることを、もしも、誰かが知っていたら、都の金品をどさくさにまぎれて回収した者が持ち去ったと考えるはずだった。
平原の魔女イライザが自分と入れ違いで都に入ったことは情報としてリシャールの耳に届いている。
オーリッサの都の大惨事の原因が王立神聖教団と騎士団の見立てである「疫病」ではなく、評議会議員サンダリオが日記の情報で呪術を行い、大惨事を引き起こしたことが原因だとリシャールにはわかっている。
南公主イグナートの命令でサンダリオが大惨事を引き起こしたのか、それとも単純に事故なのか。
王都エルドニアで宮廷会議に出席して、会議の場を仕切っていたリシャールがひそかに考えていたのはそのことだった。
オーリッサの都が商業都市の役割を失った廃墟となった結果、流民が西公領から東公領へ渡ろうと領界地域にやって来ている連絡を王都エルドニアで受けたリシャールは、移民を一人も侵入させるなと命令を出しておいた。
南公主イグナートによる計略として、東公領へ呪術師を潜入させる気ではないか、とリシャールは警戒したのであった。
(東公領でオーリッサの都の大惨事を再現されたのでは、たまったものではない)
実際はギャングどもがアジトを放棄して逃げてきているのと、南公主イグナートによる流言の計略によって不安になった民衆が「疫病」から逃れようと東公領に移住しようとしたのが、不幸にも重なった結果なのだが。
東公主リシャールは、アンドレスの都に暮らすアベコウキが召喚魔法が使えないように東公領にもかかっている範囲に結界を作り出していることに気づいていない。
リシャールが厳戒態勢で迎え討つはずの呪術師たちは、東公領には行かずに、オーリッサの都で大自然の脅威である狼の群れと戦っているのだが。
貴公子リシャールは、西公領からの移民と移民になりすましたギャングへの対処が、呪術師への厳戒であることを誰にも話さなかった。
そのため、西公領の民衆だけでなく自領の民衆から反感を買うことになった。貴族は平民を平気で虐殺する、と。
虐殺された中に卑劣なギャングがまぎれていたことも、兵士たちが不審者を生かして時間をかけて取り調べておけば正確な情報が記録されたはずだが、呪術師が自供するとはリシャールは思えず、すぐに処刑せよと命じたため、ギャングがまぎれていた記録が残されていなかった。
「移民を自領に受け入れようとすればできたはずなのに虐殺した公主」としての汚名をリシャールはかぶることになる。

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