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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 161

ルベールとリエットは、まるで、おとぎ話の中にまぎれこんでしまったような不思議な思いがした。
家の石扉は手を近づけ指先をふれただけで、すっと横にすべり、力をかける必要がなく開く。アベコウキがリビングの石柱の高さを、軽くふれて高さを調整すると椅子とテーブルがわりになる。
キッチンでマリーナが鍋に小声で囁くと、よい匂いの湯気の立つスープが鍋の中に湧いてくる。皿に囁けば、ふんわりとしたパンとバレンドルフの酒場で二人が食べたサラダが皿の上あらわれる。
「あー、またコウくんサラダ残して」
「うー、細かきくざんで干し肉と一緒に、油で炒めたほうが好きかも……リエットさん、ちょっとこっちに来て」
アベコウキはリエットに、焦げつかないフライパンの使い方を教えながら野菜炒めにして皿に乗せて着席する。
食べ終わった皿や鍋はたっぷりのぬるま湯でマリーナがさっと洗い、すっきり収納する。
(アンドレスの街って、すごい、すごすぎる)
ルベールはついまばたきの回数が多くなり、驚きすぎて言葉が出ない。
「たしかにそうね、コウくんが作るものを初めてみたときは、誰だってびっくりしちゃうわよー」
「使い慣れたら、とても便利なんだけどね」
今はルベールとリエットの二人しか住人がいないから少し静かでさみしいかもしれないけれど、街に領主のクロノバルコ邸ぐらいしか空き家がないから、ここを使ってほしいとアベコウキとマリーナから説明された。
「あの……一日あたり、おいくらお支払いすれば」
リエットが言うとアベコウキが大笑いする。
「はははっ、家賃もらうなんて考えてなかった。ルミエールさんに頼まれて作ったところだから、ルミエールさんが大家さんになるのかな?」
「無料です。これは会議で決まったことだから安心して下さい。困ったときはおたがいさま。私たちだって街から出なきゃならなくなったら、すごく大変だと思いますから」
「無料でいいんですか?」
「はい」
マリーナに言われ、ルベールの顔を困惑してリエットが見つめている。
「今、宿屋さんに宿泊してるんですけど」
「いい家が見つかりました、って言えば宿屋のおじさんは、たぶん、よかったですねってよろこんで泊まってない日数分のお金を返してくれると思うよ」
アベコウキが言ったとおりだった。
ルベールとリエットは<自由の広場>で、仕事をすることになった。
バレンドルフは警備隊もルベールをいつでも歓迎すると言ったが、ルベールはリエットと二人で働くほうを選んだ。
ダンジョンから朝起きて<自由の広場>へ瞬間移動で出勤する。朝の広場の清掃から、頼まれたことをこなす。展示コーナーの出入口の案内などもする。夕方に警備隊の荷馬車でアンドレスの街に帰ってきて屯所のそばの魔法陣でダンジョンへ。
空き時間に教会で僧侶メトラから二人は「疫病」の情報を教えられて、感染の不安が薄れてとても安心した。
「街の人たちはこの広場がとても好きで、街の教会だけでなく、ここの教会にも礼拝に来てくれています」
そうした事情もあるが、滞在する僧侶が増やせなかったり、僧侶メトラにアンドレスの街よりずっと南の宿場街から来た新しいお弟子さんが増えたりと、人手不足だったので、教会の手伝いをした二人は僧侶メトラにとても感謝された。
一ヶ月後、マリーナから二人に初月給がダンジョンで手渡された。初めの話よりも少し月給が多かったので聞いてみると、僧侶メトラ様からのお礼分が上乗せされていることが説明された。
一日の仕事を終えて、ダンジョンの湯に二人は肩までつかりながら
「なんかいい人たちばっかりのところね」
「苦労したけど本当に来てよかった」
と話しながら見つめあい、そっと手をにぎりあっていた。

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