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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 160

「マイリス、俺は絶対にこの街に戻ってくるから親父さんと待っててくれないか」
「……私も一緒に行きたい」
「マイリス、それはダメだ。親父さん、俺、行ってきます!」
「悪いな、ジョルジュ。マイリスを一緒に連れて行ってくれねぇか?」
職人ラウノがジョルジュの両肩に手でがっしりとつかんで言った。
「ずいぶん逞しくなったなジョルジュ。俺はさっき話したが妻を亡くしてる。またマイリスに何かあったらやりきれねぇ。アンドレスの街なら治療できる人がいる。娘を連れて行ってくれ」
そのやりとりを見ていた職人たちも「ジョルジュ、俺らのお嬢を連れて行け」「お嬢に助けられた命なら、お嬢を死ぬ気で守ってやれ」「トレスカーナの男の意地を見せてやれ」「親父さんに孫をみせてやれ」などと言い始めた。
「ジョルジュ、あなた、強い?」
ライラが口元に微笑を浮かべ目を細めながら言った。
吟遊詩人ディオンがその微笑を見て、何か嫌な予感がした。
「私が五日間、ジョルジュを鍛える」
ライラの特訓は血を見ない日はなかった。
腕を折る、指を折る、目を潰す。すぐに治癒の魔法で傷を癒される。
「痛みを体でおぼえなさい」
「やられる前にやりなさい」
離れて見ていたディオンやラウノが、何度も目をそむけるほど過酷というよりも凄惨な特訓だった。他の職人たちも、ライラの見た目からは想像しがたいえげつなさで急所を的確に攻撃する姿に戦慄した。
(ギャングより、あの女のほうがやべえ)
「私より、ルミエール様は強い」
それを聞いたとき、職人たちは新しい公主に対してだけではなく、アンドレスの女はおそろしく強い、と酒を飲むとしみじみと語ったという。
ライラは、ルミエールは酒に強いという意味で言ったのだが……。
吟遊詩人ディオンの人気がさらに上昇した。ものすごい妻を持つ男として。
夫婦喧嘩などしようものならどうなるか職人たちは想像して恐怖した。
それでも夜になると酒場に来て明るく陽気に歌う男の心の強さは想像以上、職人たちは吟遊詩人ディオンに畏敬の念を抱いた。
「路銀にしろ。これはお前が、今まで街に来て働いた分の金だ。アンドレスの街までは遠い、この馬を使え」
職人ラウノはもっとジョルジュと娘のマイリスに言いたいことがあったはずなのに、うまく言葉にできない。
マイリスは乗馬ができた。丘陵地域では親は子供に乗馬を教える。
ジョルジュは何度も落馬してはライラに治療され、一日で乗りこなせるようになった。
ジョルジュとマイリスは南へ。
ディオンとライラは北へ。
「では、また会おう」
「はい!」
短期間の滞在だったにも関わらず、吟遊詩人ディオンと逃亡中の皇子ジョルジュには、同じ戦場にいる戦友のような友情が芽生えていた。
ルベールとリエットはダンジョンに案内されて、呆然としていた。
美しい空、全体的に真っ白な整然とした街。正方形の家は積み木細工のおもちゃのように可愛らしい。
暑くも寒くもない気温。縦横に十字に走る大通りだけが色ちがいの赤茶色となっている。そこには二人の見たことのない、まるまるとした半透明の色鮮やかなものがゆったりと移動していた。それもまた可愛らしい。
しかし、小鳥の鳴き声や人々の暮らす音がなく、雪の日の朝のように、とてもここは静かだった。
さらさらとした髪の利発そうな顔つきをした少年と派手な印象はないがリエットが見てとても理想的な美しい体つきのよく笑う明るい印象の美人、アベコウキとマリーナが街の路上で立ち止まり、ふりむいて、二人が来るのを日ざしの中で待っている。

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