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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 159

「旦那、奴ら何なんですか?」
「媚薬を生成する呪術師どもだ」
媚薬という言葉に職人ラウノが眉をしかめる。ラウノは媚薬を投与された女性が心が壊れて、やがて衰弱して死んでしまうことをよく知っていた。
マイリスの母親は媚薬を何者かに投与されて死んだからであった。平原の街道沿いにある宿場街にいる僧侶に治療を頼むために連れて行ったとき、媚薬の毒で、延命はできるが心が戻る可能性はほとんどないと言われ職人ラウノは深く絶望したことがある。
「ところで、旦那はなぜそんなことを知っているんでしょうかね?」
職人ラウノから笑顔が消えていた。
「お父さん?」
「マイリス、少し黙ってろ」
吟遊詩人ディオンの隣の椅子に毛玉を抱いたライラがやって来た。
「私はライラ。西公主ルミエール様から評議会メンバーとして任命された者。ギャングは私たちの敵」
「ルミエール様?」
職人ラウノがルミエールの名前を聞いて、ある噂を思い出した。
アンドレスの街でギャングのアジトに討ち入りした勇猛果敢な美しい女隊長。
そして、王都エルドニアでラウノが酒造りの職人として貴族から招かれ、御前試合という痛ましい殺し合いを観戦させられたとき、相手を気絶させたが誰も殺さずに優勝した少女がいた。
ルミエールという名を思い出すのは、職人ラウノにとって久しぶりであった。
「ギャングの仲間かと疑ってしまい申し訳ございませんでした」
吟遊詩人ディオンに職人ラウノが頭を下げて、なかなか顔を上げてくれなかった。
「ディオンが悪い。疑われること言った」
ライラが職人ラウノに言った。
「親方、その連中が来て変わったことはなかったか?」
「特に変わったことはありやせんでした。奴ら、また街に戻って来やがりますかね?」
「俺の推測では、すぐに戻って来ることはないと思う。また、街に旅商人が来ない時期になったら潜伏するために来る可能性はあるが……」
ルミエールが、オーリッサの都が壊滅してダルア公が死去し、王命で西公主に任命されたこと。
西公領にはオーリッサの都の復興のため五年間の減税処置となったこと。
それらを吟遊詩人ディオンは職人ラウノに伝えた。
「もし呪術師を見かけても、手を出すな。相手がどれだけいるかわからない」
吟遊詩人ディオンは職人ラウノの妻の話を聞いたあとで、強い口調で言った。
「媚薬の被害者が出たらアンドレスの街に行けば治療できる術師がいる。ただ、このことは王立神聖教団の僧侶たちが来ても秘密にして言わないでほしい」
「わかりました」
職人ラウノが返事をしたあと、うつむいて唇を噛みしめていた。呪術師を殴り殺して、妻の仇を討ちたいのが本音としてはある。怒りの火は何年たってもまだ消えていない。
母親の悲惨な末路を初めて聞いたマイリスが、そばにいたジョルジュにもたれて泣いていた。
「ライラ、このことをアンドレスの街のルミエール様に知らせるために戻るか?」
「ダメ、アベコウキがいる。なんとかなる」
ライラが吟遊詩人ディオンに言った。
ディオンはたまにライラのことが理解できないときがある。情に流されないが、冷酷と誤解されかねないことを言う時がある。
「ディオンさん、俺がアンドレスの街に行きます」
その場にいた全員がジョルジュを見つめた。

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