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奇跡の男と牝奴隷たち
官能リレー小説 - その他

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奇跡の男と牝奴隷たち 158

最近、職人以外の旅人たちが酒場にやって来るようになった。宿屋に宿泊している。オーリッサの都で「疫病」騒ぎがあってから、旅商人の往来が途絶えている。
トレスカーナの街の職人たちは、旅人たちのことを薄気味悪い連中だと思いながら、自分たちから話しかけずに距離を取っている。
ジョルジュが働き始めたばかりの頃もそんな感じで距離を置いて接していた。
マイリスも、注文以外は話しかけて来ない旅人たちにどう接したらよいのかわからずにいた。
ライラと吟遊詩人ディオンがやって来たのは、ちょうど新酒のパーティーの日であった。
吟遊詩人ディオンが陽気な曲を披露すると、職人たちはディオンを囲んで酒を飲んだ。職人たちは、ディオンが気に入った。ディオンは歌うために生きている。
二人は新婚旅行で王都エルドニアに向かう旅の途中で、とっておきの新酒を保管してもらいたいと、ディオンがマイリスに「親方頼んでみてくれないか?」と交渉していた。
そのあいだに、ライラが職人たちと喉だけでなく腹の底から焼けるような強い酒の飲みくらべの賭に挑戦して、ちゃっかり旅費を稼いでいた。
「おとといあたりから、気味の悪い連中が街から出て行ったからすっきりしたぜ」
酔った職人たちがディオンに話した。
「その連中は、腕に二匹の蛇みたいな刺青をしてなかったか?」
「そういえば、そんな人もいました」
マイリスが、黙々と食事をする男の腕にある蛇の刺青を見ていた。
トレスカーナの酒を買いつけに来る旅商人たちは、新酒の時期になると以前はやって来ていた。
「十年前のこの時期に頼んでおいた酒を受け取りに来た」と貴族たちの依頼で取り出しのときに保管料を払いに来るのである。王都エルドニアに帰る旅商人たちに呪術師たちは姿を見られたくなかった。
また王立神聖教団の調査団がオーリッサの都から撤収を開始した情報をつかんだ呪術師たちは、トレスカーナで神聖教団の調査団とはちあわせないようにするため移動を開始したのだった。
吟遊詩人ディオンは呪術師が自分たちの肉体に刺青のように呪術を施して能力を高める「呪装術」があることを知っていた。
(呪術師がかなりの人数で、トレスカーナの街に潜伏していた。なぜだ?)
職人ラウノが娘に言われ、酒造り用の建物に行き、仕上がりは甘めの酒がいいか、少し辛めの酒がいいか、どちらになるかわからない酒にするか、今年の酒を三種類を酒樽からよそってジョッキに注いだ。
職人ラウノには、味のちがいのわからない客には、酒の保管はしないというこだわりがある。
吟遊詩人ディオンが、呪術師たちについて考えているときに、酒場にラウノとジョッキを運ぶ手伝いをしていたジョルジュがやって来たのだった。
「おや、何か気になることでもありやしたか?」
ラウノがディオンに話しかけた。
「おとといまで変わった連中がいたと聞いたんだが以前に来たことがあるか?」
「いや、今年だけしか見たことがない連中で、奴ら新酒が仕上がるちょうど前にいなくなりやがって。この酒の街に何をしに来たことやら……」
「それだ。新酒の時期になったから、他の客が来る街から出て行ったってことだ」
ディオンが職人ラウノの話を聞いて、呪術師たちの行動の理由を想像した。

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