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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 152

「バレンドルフの酒場へようこそ。お二人は初めてのお客様ですね。このテーブルの石板にふれてもらうと、今、お出しできる料理と金額がわかりますので指でさわってみて下さい。あとこちらは期間限定のサービスで出しているサラダです。よろしければこちらを召し上がりながら、注文が決まりましたら従業員にお声がけ下さいね」
マノンがテーブルの真ん中に手のひらサイズの石板が置いたあと、別の従業員が二人の前にサラダの皿を並べた。
「では、ごゆっくりお食事をお楽しみ下さいね」
「ありがとうございます」
よくわからないところもあったが、リエットがマノンに思わず言った。
「サービスだって。おいしそうだけど、食べてみていい?」
ルベールに小声で話しかける。
(注文してないけどサラダが出てきた。そんなに腹ぺこに見えたのかなぁ、うーん)
旅で立ち寄ったどの店でも、これほど丁寧に接客されたことはなく、また食材の仕入れがうまくいっていないと言われて、客が料理を選ぶことができなかった。
干し肉に小麦粉をかためて団子にした保存食の食事が続いていたので、目の前のサラダの鮮やかな緑の色合いが輝いているようにルベールには思えた。
「いただいてみようか?」
二人が木製のフォークに薬草を刺すと新鮮でいい小さな音がした。二人が同時に薬草を口に運んだ。
そのまま全部食べ終えてしまってから、ようやくリエットが「おいしすぎて、泣きそう」とルベールに言った。ルベールもおいしすぎて、目を潤ませて目頭が熱くなっていた。 
サラダを食べ終えた二人が感動してしばらく皿を見つめたままじっとしていると、マノンが様子がおかしいと気にしてテーブルにやって来た。
「あの、お客様、どうかなさいましたか?」
二人が顔を上げると目を潤ませていたので、内心ではぎょっとするほど驚いた。
「いや、実は……」
ルベールがオーリッサの都の近くの村から旅をして来て、サラダを食べたら、がんばってアンドレスの街まで来てよかったな、と思って泣きそうになっていたと素直にマノンに話した。
「それはお二人とも大変でしたね。あの……ちょっとお待ち下さいね」
マノンは急いで厨房で久しぶりに料理をしていて上機嫌のバレンドルフに「サラダを食べて泣きそうなお客様がいるんですけど」と話しかけた。
(オーリッサの都のそばから来たから、帰ってとか言われるのかしら)
リエットが不安になった。旅の途中で食事中に店を二人で追い出されたこともあったからであった。
「どうもこんばんは、店主のバレンドルフです」
すらりと背が高く、体つきは逞しいが笑顔は人あたりのよいエプロン姿のバレンドルフが来たとき、二人は緊張して震えていた。
(店主が来たってことは……)
ルベールは、ついオーリッサの都のそばから来たと話してしまったことを後悔した。
「今夜のお食事は俺のおごりです。何でも好きな料理でも、酒でも注文なさって下さい。ちょっとお時間をいただければ何でも作りますから」
「えっ?!」
リエットが顔を上げてバレンドルフの笑顔を見た。
「お二人とも遠くから大変でしたね。おすすめはマノンのサンドイッチとスープです。マノンは、さっき会ったと思いますが、俺の妻です」
「バレンドルフ、その説明は必要かしら?」
バレンドルフの後ろにマノンが来ていた。
「バレンドルフの妻のマノンです。ここのお客様は忙しい警備隊の人たちが集まりますから、食べやすいサンドイッチが人気があります。石板にはさわってみましたか?」
「いえ、まだ……」
ルベールは追い出されるどころか、店主が二人を歓迎しておごらせてほしいと申し出てきたことについていけずに、呆然としながら答えた。

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