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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 151

「なんか、お金が戻ってきたんだけど……」
リエットが動揺していた。
ルベールも他の宿場街や村の宿屋よりもサービスが良いことにとまどいながら、返金されたお金を確認してみて、計算すると食事代も安いことに気がついて驚いた。
「他のところが値上がりしていて高すぎるのか、この宿屋がものすごく親切で安いのか、わからなくなってきた」
いちおう宿屋に20日間の滞在予定で料金を先払いしてある。二人は宿屋に滞在している間に住む場所や仕事を見つけるつもりだったのだが、街に来るまでのあいだに二人が考えていた予算で40日滞在しても予算をオーバーしない。
(これなら、二人でゆっくり仕事や住むところが探せそうだ)
ルベールがそう思いながら、窓の外の街を見つめていると、隣にきたリエットが「本当になんとかなるかも」とつぶやいた。
ライラとディオンはルベールとリエットがアンドレスの移住希望者だと聞いて、アーロン以外のあと二人の人物に会ってみることをアドバイスしていた。
その二人を訪ねるのは明日にすることにして、日が暮れるまて二人でベッドで寝そべって少し眠った。
アーロンから酒場の場所を聞いて、二人は街をながめながら歩いた。
アンドレスの街の通路は、縦横にまっすぐ走っていて、大通りも小路も整然としている。道がとてもわかりやすい。
<自由の広場>の評判を、ルベールはオーリッサの市場で聞いていたので、アンドレスの街へ移住を思いついたのだが、アンドレスの雰囲気と旅の途中の宿場街の雰囲気のちがいに驚いていた。
「人もいっぱいで活気があるけど、うるさくない感じで素敵ね」
リエットもアンドレスの古い街並みをながめながらほほえんでいる。オーリッサの都よりも、アンドレスの街には古い歴史がある。
二人はもともと旅商人の手伝いで、オーリッサの都の市場について行って荷物を積んだり降ろしたりする仕事をしていた。
毎回同じ旅商人の手伝いというわけではないのだがたまたま一緒に仕事をすることが続くことがあり、帰り道の荷台で話をして、近くの村に住んでいることがわかった。それから三年、二人は一緒に少しずつお金を貯めて荷馬車を手に入れた。
旅商人のように遠くに行くわけではないが、オーリッサの都と自分たちの暮らす村の周辺を往復して、雑貨屋や宿屋や酒場で必要な品物の注文を聞いて、かわりに都の市場に買いつけに行く仕事を始めた。
二年間、商売は順調だったのだが「疫病」の噂が流れ、オーリッサの都が封鎖されると仕事を失った。
オーリッサの都の雰囲気は、喧騒と入り組んだ迷路のような路地、そこには集まってきた噂話がひしめいている緊張感のある雰囲気で、リエットはルベールに「なんとなく息がつまる感じ」と言ったことがある。
宿屋の老主人アーロンから酒場と聞いてルベールはどこか薄暗くいかがわしい雰囲気のオーリッサの都の酒場を思い出し、嫌な雰囲気だったら今夜は旅の保存食を宿屋の部屋で二人で食べて、明日からは食事は<大鴉亭>で済ませようと考えていた。
女性客に酔っぱらいがやたらと話かけてきたり、賭博に誘ってくる客がいたり、一夜限りで誘ってくる商売女がいる酒場に、大切な恋人のリエットを毎晩連れてくる気にはなれない。
「いらっしゃいませ」
バレンドルフの妻マノンは、客の顔や名前をおぼえることが得意である。
「食事をしたいんですが……お酒飲まなくても大丈夫ですか?」
リエットがマノンに言うと「大丈夫ですよ、お二人様でよろしいですか?」とにっこりと笑顔で対応してくれた。
マノンに空いているテーブル席へ案内され、そのテーブルが拭かれてきれいなことに、ルベールが驚いた。よく見ると客が退席したあと食べ終えた皿や酒のジョッキを一人の従業員が奥へ運んでいくと別の従業員がテーブルを拭いていた。
街の住人が家族連れていたり、大門で会った制服姿の者たちがおとなしく酒を飲みながら食事をして雑談している。
(酒場……なのか、ここは?)

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