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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 144

「アベコウキ、これが何かわかるか?」
僧侶メトラは薄紫色の結晶の粒を見て鳥肌が立つ。
媚薬の素。僧侶メトラは王都の大教会に厳重に保管されている媚薬の素材として見たことがある。
アベコウキが粒に指先をつけて目を閉じた。
「魔力の結晶だ」
アベコウキはルミエールに言った。
「これを水に溶かすと媚薬ができる」
とルミエールがアベコウキやマリーナに説明した。
「そうなんですか?」
アベコウキが考えて一人で納得してうなずいた。
(媚薬で感度を上げて覚悟させるってことか)
「これはどうやって作る?」
ルミエールの質問に、僧侶メトラだけでなく、騎士ルシアやバレンドルフが驚いた。
「召喚魔法の魔法陣で、魔力や生命力を集めて圧縮させる。それはちゃんと集めてないし、圧縮もいまいち。西公領じゃ作れないけどね」
アベコウキの答えに、ルミエールが魔力吸収魔法陣があり、アンドレスの街を中心とする大結界の効果で召喚魔法が西公領では発動しないことを全員の前で説明した。
「これは他の公領から持ち込まれたか、アベコウキが結界を作る前から潜伏していたギャングどもが持っていたということになる」
媚薬の効果は「アブラーン」の呪文で解毒できる。
アベコウキは媚薬で生きた人形のようになった犠牲者をアンドレスの街で治療したことがある。媚薬は感度を上げて覚醒させる前に心が壊してしまう。
「村人たちにギャングどもが媚薬を投与して言いなりにしていることがわかった」
ルミエールは全員に、ルシアが持ち帰った小村ミッツァのジェンナの証言を聞かせた。
「ひどい」
マリーナがつぶやいた。
「卑劣なギャングどもを私は許さぬ」
ルミエールがそう言った。
ジェンナから聞き出した残り四人のギャングどもの容姿から見分けがつく。小村ミッツァに奇襲をかけて始末することはできる。ただし、媚薬で服従させられた村人たちが、ギャングどもに命じられ敵として立ちはだかることが考えられる。ジェンナは媚薬で服従させられ、村人たちを騙す手伝いをした。
「他の村に潜伏したギャングどもは、ミッツァで騒ぎがあれば散って逃げ、別の村で媚薬を使い酷い行いを繰り返すであろう」
騎士ルシアとマルセリナは、ギャングどもの伝令として村をめぐっていた男を捕らえて帰ってきた。
ジェンナは村に荷馬車が停まっているあいだは、荷台で逃げられないように縛られていた。どの村に行ったのか、ジェンナにはわからない。
ジェンナの夫の「ロイ」と名乗ってなりすましている男は、バレンドルフが媚薬の水が入った皮袋を見せると「その水をくれ」とあっさりと自供した。
行った村は八ヶ所、ミッツァの村をふくめると九ヶ所のアジトがあることがわかった。
ただし、それぞれの村に何人のギャングが潜伏しているのか、媚薬の素の結晶の入手ルートなどについて「ロイ」は何も知らなかった。
バレンドルフはルシアが持ってきた媚薬の水の皮袋で、伝令の「ロイ」から情報を吐かせてルミエールに報告していた。
「九ヶ所の村を同時に奇襲をかけることは警備隊の兵数では不可能。どの村を奇襲をかければ、媚薬の素の結晶をどうやって入手したか知っているギャングを捕縛できるかの判断が難しい」
バレンドルフが報告した。
(もしライラがこの場にいれば、どんな計略を立てるのかしら)
僧侶メトラが黙って考えていた。
「んー、その村の人たちに薬草の葉を一枚を食べさせれば解毒されちゃう。村の人に媚薬の水を飲ませて言うとおりにさせてるのは、そうしないと人数が村の人が多くてやられちゃうからじゃない?」
マリーナが激怒して、アジトの村に自分が行くと言い出しかねないとアベコウキは思った。
マリーナは解毒の魔法と治癒の魔法が使える。解毒してから治癒の魔法でHPが回復した住人に
「ギャングは誰?」
「あいつです!」
伝令のギャングの男のように自分も媚薬の水を使っているギャングがいたら、関係ない村人を指さすだろう。結局、マリーナがわからないから全員みなごろしにしてしまう、という最悪な展開をアベコウキが想像した。
隣で黙り込んでいるマリーナがこわい。
「いっぱい薬草を作って、その九ヶ所の村に運んで食べさせたら、どうなるだろう?」
アベコウキの意見を聞いていた騎士ルシアが、はっとしてアベコウキを見つめた。
「途中の村でこんなことがありました」
騎士ルシアはツルガ村で大量に持って行った食糧を分配してしまったことを話した。
「旅商人が来ないので、今の時期だけ食糧不足の村が多いということですね」
僧侶メトラが言うと「そうなんです。子供たちまで一日一食で我慢しているそうです」と騎士ルシアが答えた。
「ちなみに、マリーナさんの菜園のサラダは、薬草サラダ。解毒効果があるから体には良いからちゃんと残さず食べなさいって言われるんだけど」
「あの、うちの庭の菜園に生えてる野菜が薬草らしいんです。ダンジョンができたらどんどん生えてきて、とてもおいしいですよ」
アベコウキとマリーナが言うのを聞いて、ルミエールと僧侶メトラが顔を見合せた。
「たぶん薬草が育つ条件がマリーナさんの家の庭にたまたまそろっちゃったみたいで。もともと、普通の野菜の種を植えただけなんだけど」
アベコウキの言う「普通の種」は植えたら三日で収穫できる魔法ですくすくと育ったものなのだが。

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