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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 140

評議会メンバーのマリーナの街での人望は、だてじゃなかった。1ヶ月訓練に通っていた若い娘たちをまるで姉のように心配して、アベコウキに大容量リュックサックを作らせて食糧を持たせた。
このマリーナが持たせた食糧は、旅の12日目、途中の商人が来なくて困っている小村で分配され感謝された。
サンドイッチを見たことがない村の男の子が、ルシアに手渡されたサンドイッチをかじってみて、食べかけのサンドイッチを家に持って帰り、妹に分けていた。
「親はいないのか?」
「みんな大人は畑に行ってるんだ」
ルシアとマルセリナは村に残っている子供たちや老人にパンやスープを分けてやった。
聞けば今までは旅商人が来ていたので、この時期は作物の収穫期ではないが食糧が買えた。それが来なくなったのでそれぞれの家の食糧ひとつに集め、分配して節約しているということだった。
「あと三ヶ月もすれば収穫期でございますから。それに納税がなければ、今ほど節約しなくても済みます。みんなが戻ってきたらどれだけよろこぶか」
老婆が涙ぐみ、マルセリナが背中をさすってやっていた。
一日一食、夜食のみで幼い子供たちが耐えている状況を見かねて、食糧をほとんど分けてしまった。
ルミエールの評判は上がったが、二人がどうしたかと言えば、空腹だが習得した治癒の魔法で疲労は回復して、また途中でルシアが狩猟で襲ってきた狼を逆に魔力弾で狩った。また、アベコウキが切れ味抜群に加工した魔剣のサーベルは狼を肉にするのに役立った。
たき火で焼いて、口元を油まみれにして二人で笑いながらかじった。
「おなかがとても空いたときは、なんでもおいしいものね、ルシア」
「アンドレスの街にいると贅沢に慣れちまうな」
マルセリナだけの旅だったら、狼を撃退しようとは思っても食べようとは思わない。
「旅商人が来なくなっている影響は、帰ってルミエール様に報告しなくては」
宿場街ヴァルラスタに二人は予定どうり到着した。
閑散とした宿場街、いちおう食堂も開店しているがメニューは、水とパンのみ。
宿場街に着いたら、まともな食事ができると期待していたルシアは不機嫌であった。
雑貨屋によれば旅商人が来なくなって街の品物の物価が値上がりしているという。また宿屋の宿泊費まで便乗して値上がりしているらしい。
開店していた食堂と雑貨屋に減税になった話をマルセリナは伝えた。
「でも、騎士様、旅商人が来なければ店をやっていても品物も入ってこなければ、めったに客も来ないからね。店をたたんで畑でも作ってるほうがましかもしれないですよ」
宿屋には立ち寄らずに、旅の目的の街はずれの教会へ二人は行った。
「残念ながら、この街からも、かなり人が出て行ってしまいました」
僧侶セシルは来訪した西公主ルミエールの二人の使者から減税に関する情報の書状を受け取り、街の状況を説明した。
(アンドレスの街とはずいぶんちがうな)
ルシアが騎士の従者のふりをして、マルセリナの隣で話を聞いていた。
「街から出て行った人たちはどこに?」
「わかりません。ただ……」
マルセリナの質問に、僧侶セシルは途中で話すのを躊躇した。
「私たちは公主様に王都エルドニアからのおふれを伝えに来ただけです。あなたから聞いたことは報告の義務はありません」
マルセリナが情報を聞き出すために、誰から聞いたか報告しないふりをする。
ルシアは黙って口をはさまずに聞いている。
ルシアだけだったら「言いかけてやめるな、はっきり言えよ」と自分たちと年齢は変わらない若い僧侶に言ってしまうところである。
「噂では旅商人になりすまして他の公領に渡る人などもいるらしいのです」
南公領に向かった者は奴隷となるか、ギャングとなるか、捕らえられて選択を迫られる。東公領に向かった者は不審者としてその場で殺害される。
僧侶セシルはそこまでは把握していない。

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