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奇跡の男と牝奴隷たち
官能リレー小説 - その他

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奇跡の男と牝奴隷たち 139

西のエード族が石を使って魔法の錫杖を作成したように、北のカルーム族は鋼鉄の魔法の剣を作成していたのである。
ペンダントを作成したときのように全部はじめから作らなければならないかとアベコウキは思っていたが、これは思いがけずよい素材が見つかったとよろこんだ。
サーベルをルミエールから拝領したマルセリナは、使うのがもったいないと思ったと、三杯目の酒を飲みながらルシアに言った。
「飾っておく?」
「でも、そうもいかないわ。騎士だもの」
「騎士じゃなくて剣をうっとり見てる女性がいたら、剣で誰かを刺そうとたくらんでる人か、王都にいるオークションの鑑定士ぐらいかも」
「うん、そうね」
マルセリナには新しい武器を作ってあげるのに、ルシアには何もないのかとマリーナがアベコウキに質問すると「魔法がすごいから武器はいらない。素手でいけるよ」と言った。
魔法というよりも拳法に近い。魔力による身体強化の俊敏さの向上は、ライラやルミエールが使いこなしている。その応用でアベコウキはルシアに拳法を新たな特技として習得させた。
手のひらから魔力弾を放つのも、その拳法の技のひとつに入っている。ひとつずつ魔法を習得させるより、いくつもの魔法がセットになった特技のほうがお得だろうとアベコウキは考えたのである。
魔力弾を人差し指の指先から放つ技。
魔力弾を連続で一気に百発打ち出す大技。
素早い蹴りで至近距離なら相手に接触していなくても烈風の真空で切り裂く技。
全身の強化した力をすべて込めた一撃を打ち込む技。
息を少しずつ吐き出し息を吸わないで一時間以上耐えられる技。
馬よりも早く走るために地面から浮かんで見えるほどの脚力で長距離を走りきる技。
裁縫の技。
これらがセットになっている。
裁縫の技がどのように戦闘に役立つかは不明だが、魔法の見えない糸で縫ったりほどいたりできる。
アベコウキが習得させてから、やばいと思ったが、なぜそんな強烈な技が「拳法」で習得されたのかまではわからなかった。女神ラーダの命のかけらの効果が発揮されていたからてあった。
マルセリナには指先からの魔力弾で以前の銃のように狙撃できるようになった、とルシアは話した。
(この力で、マルセリナを何があっても守りぬく)
そう心の中で誓いながら、ルシアは酒をひとくち飲んだ。
ルシアが騎士でいる理由は、マルセリナがいるからであった。王都エルンストから遠い西公領への行けと命じられたときに騎士を辞めてしまおうかと本気で迷っていたのだ。しかし、同行する貴族出身のマルセリナを見たとき考えは変わった。
一目惚れしてしまったのである。
マルセリナに騎士団からの命令でどんな方法であれ騎士ルシアを手なずけておくようにという命令が出ていることを、ルシアは知らない。ルシアの恋心を受け入れてくれた恋人だと思い込んでいる。
アベコウキの訓練はマルセリナの気持ちに微妙な変化をもたらした。厳しい訓練を一緒に乗りこえた友としての親愛の情が、ルシアに対して芽生えていたのである。
五日後の朝、騎士ルシアとマルセリナは宿場街ヴァルラスタを目指して出発することになった。
馬で片道二十日ほどの旅である。
「どうにか間に合った」
アベコウキがルシアにリュックサックを手渡した。
「中にサンドイッチとパンとサラダが30日分ずつ、あと皮袋にスープが60日分、二人で食べられるように入ってるから。あと、まだ入る余裕も作ってある」
とアベコウキが言った。
かつてアジトの「賢者の塔」で料理人に作ってやった大容量の背負い袋を運びやすいようにしたのと、食糧の保存ができるようにした改良版の試作品。
ダンジョンで、マリーナと二人で旅に必要な食糧を急いでつめこんだ。
「二人とも気をつけていってらっしゃい」
マリーナにみおくられ、照れながら騎士二人は出発した。今までみおくられて任務に出かけたことが二人にはなかった。
「なんか、へんな感じがする」
「でも、うれしい。早く手紙を届けてアンドレスの街に帰って来たくなるわね」
「そうだね、マルセリナ」

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