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奇跡の男と牝奴隷たち
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奇跡の男と牝奴隷たち 122

「イラベラに会う。ディオン連れて行って」
吟遊詩人ディオンは、思いがけない人物の名がライラの口から出たので驚いた。
平原の魔女。商業ギルドの首領。肥満した巨体の貴婦人。噂では、宮廷官僚だけてなく王家にも融資しているとも言われている。
「ライラ、会ってどうする?」
ルミエールがライラに質問した。
「お金は、あるところにはある」
ライラがルミエールに言ったあと、ディオンの顔をじっと見つめた。
「わかった。君をイラベラに必ず会わせる」
ディオンは帰ることを避けてきた王都エルドニアにライラを連れて行くことにした。
王都に帰り、宮廷楽士の家族にイラベラと会わせてくれる貴族の人物を紹介してもらうことはできるだろう、とディオンは考えた。
ライラは暗殺者としての過去を隠して、アンドレスの街で暮らしてきた。ディオンに過去を知られるのはこわかった。しかし、過去は変わらない。
(ディオンはありのままの私を愛していると言ってくれるだろうか?)
ライラは膝の上の毛玉を撫でた。
吟遊詩人ディオンがライラの願いをきいて、王都エルドニアに帰ると言った言葉の重さがわかる僧侶メトラが、うつむいて膝の上で両手をぎゅっと握りしめた。
ディオンが少年の頃に貴族の女性たちにもてあそばれていたつらい日々があったことを、メトラは聞いたことがある。
「それでも俺は歌って生きている。君が大神官の試練の儀式を受けるのも、俺が一緒にいて、たまに歌って、こうして二人で、たき火の前で話しているのも、運命だと思う」
はげましてくれたディオンの横顔や声を、今でもメトラは思い出せる。
(……これも運命なのかしら)
メトラが胸の中でつぶやいた。
ルミエールはライラが商業ギルドの首領イラベラに会って「交渉してみる」と言った意味が、命が惜しければルミエールに資金援助しろ、と恐喝に行くつもりだとは、まったく思っていない。
「ルミエール様、必ずライラをイラベラに会わせてみせます」
とディオンがはっきりと言った。
(イラベラ……商業ギルドのボスか。たしか、ライラは商業ギルドのボスの養女だったな)
アベコウキが会議中、ライラと吟遊詩人ディオンに注目が集まっているあいだ、目を閉じて、イラベラの情報を確認していた。
「ライラが交渉に行って戻ってくるまでのあいだはなんとかしなければならないが、アベコウキ、何か良い知恵はないか?」
「えっ、あ……はい。あの、まだ試していないことがあって……うーん、まあ、1ヶ月ぐらいかかると思うんですけど、やってみます」
マリーナは、ちょっぴり嫌な予感がした。
「ライラ、旅の準備に必要なものがあればあとでもいいから言ってくれ。アベコウキにはこのあと聞きたいことがある。執務室へ来なさい」
(あれ、コウくん、なんかルミエール様に呼び出されるようなことをした?)
「あ、あの、ルミエール様、コウくんと一緒に執務室に行ってもかまいませんか?」
「かまわないが、マリーナ女史、今は領主代行でもあることは忘れないように」
ルミエールが騎士ルシアとマルセリナをちらりと見てから、マリーナに言った。
「では、他に話し合いたいことがなければ、本日の会議を終了とする」
アベコウキを会議に呼んだのは深刻な食糧問題に関することを協力させるためだとわかったが、なぜ吟遊詩人ディオンや騎士ルシアとマルセリナを会議に呼んだのか、バレンドルフにはわからないまま会議が終了した。
「マノン、俺、警備隊長になった」
「えっ、またまた、私をからかってるんでしょ?」
帰宅して妻マノンに信じてもらえず、バレンドルフがどうしたものかと、会議が終わったあと、一緒に連れてきた吟遊詩人ディオンとライラに
(ちょっと二人とも何か言って助けてくれ)
というような、すがるような目で見つめた。

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